交差点で発生した交通事故の過失割合。事故状況で過失はどう変わる?

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交差点事故の慰謝料の算定に大きく影響する過失割合

自動車事故のうち、約半数が交差点で起きていると言われています。しかし、交差点での交通事故とひとくちにいってもさまざまなケースが考えられ、信号機の有無や双方のスピード、道幅などの状況によって過失割合も大きく変わります。
そして、この過失割合が慰謝料の算定に大きく影響をしてきます。
こちらの記事では、交差点事故の過失割合について、よくあるケースをもとに解説をしていきます。

過失割合とは

過失割合とは、交通事故における加害者と被害者双方の落ち度(責任)の割合のことをさします。

交通事故が発生すると、当事者双方のどちらが交通違反や不注意の程度が大きいのかを判断されることになります。

たとえば、被害者に一切の落ち度がない場合は、過失割合は100:0と表され、加害者に過失が100%あるということになります(いわゆる、もらい事故です)。

この過失割合は事故の状況によって大きく変わり、交通事故の加害者と被害者が交渉を行い、過失割合を決めていきます。

基本的には加害者側の保険会社から過失割合を提示されますが、被害者が納得できなければ、示談交渉で争っていくことになります。

過失割合について詳しく知りたい方はこちらをお読みください。

交差点での事故で過失が決まる事情

交差点で交通事故が発生した場合、どのような状況で交通事故が起きたかによって過失割合が変わります。

たとえば、信号のある交差点での交通事故の場合には、加害者と被害者の双方が信号を守っていたケースと、どちらかが信号無視をしていたケースでは、過失割合は大きく異なります。

同じように、信号のない交差点の場合だと、一時停止や優先道路といった規制や状況によって過失割合が変わります。

また、日中と夜間、事故の相手が自動車なのかバイクなのかによっても過失割合の変動があります。

次の項目では、ケース別に詳しく過失割合を解説していきます。

信号の違いによる過失割合の違い

信号機がある交差点で交通事故が発生した際の過失割合をみてみましょう。

信号のある交差点での直進車同士の交通事故

事故状況 過失割合
青信号のA車と赤信号のB車の衝突 A:B=0:100
赤信号のA車と赤信号のB車の衝突 A:B=50:50
黄信号のA車と赤信号のB車の衝突 A:B=20:80
青信号のA車と信号残りのB車の衝突 A:B=30:70
信号のある交差点での直進車同士の交通事故のイメージイラスト

信号無視があった場合、基本的には赤信号無視をした自動車に重い過失がつきます。

青信号で直進していたA車と赤信号で直進したB車との交差点事故であれば、信号無視をしたB車に100%過失がつきます。

黄色信号のA車と信号無視で赤信号を直進したB車との事故の過失割合は20:80で、青信号のA車と信号残り(交差点侵入後に赤信号に変わったケース)のB車では、30:70になるなど、細かい修正がなされます。

また、信号無視をしていたB車が明らかに先に交差点進入していた場合には、A車が青信号で交差点に進入したとしても、A車に10%程度の過失がつく可能性があります。理由は、B車の進入状況をみてA車が事故を回避できた可能性があるからです。

このように、信号の色を中心としながらも、交差点に進入したタイミングや速度など、さまざまなな事情を踏まえ、過失割合を決定していきます。

信号無視の事故の過失割合は、下記で詳しくご説明しています。

直進車同士の出会い頭の事故の過失割合

信号機がない直進車同士の出会い頭で交通事故が発生した場合は、下記の要素などで過失割合を判断していきます。

  • 片方の車両が減速していた
  • 片方が優先道路を進行していた
  • 双方の道幅に差がある
  • 片方に一時停止標識がある

これらのケースを順番にご説明いたします。

片方の車両が減速をしていたケース

事故状況 過失割合
右方車Aと左方車Bの速度が同じ A:B=60:40
左方車Bが減速せず、右方車Aが減速した A:B=40:60
左方車Bが減速して、右方車Aが減速しない A:B=80:20

信号機のない交差点では、双方の速度状況によって過失割合が大きく変わります。

道路幅や走行スピードが同じであった場合、道路交通法により左側の車が優先される事になるため、右方車:左方車で過失割合は60:40となります。

どちらかが減速をしていた場合は、ここから過失割合が修正され、一般的には、減速しなかった側へ20%過失が加算されます。

これにより、交差点で減速しなかった側の過失割合が大きくなります。

片方が優先道路を進行していた

事故状況 過失割合
優先道路のA車と優先道路ではないB車が衝突 A:B=10:90

信号機のない交差点で、片方が優先道路だった場合の過失割合をみてみましょう。

交差点の一方の道路が優先道路だと、基本的には過失割合は優先道路走行の車の過失が重くなります。

もっとも、優先道路でない車が明らかに先に交差点に入っていた等の事情があれば、上記過失割合が修正されることもあります。

双方の道幅に差がある

事故状況 過失割合
道幅が広いA車と道幅が狭いB車が衝突し、速度が同じ A:B=30:70
道幅が広いA車と道幅が狭いB車が衝突し、B車が減速していた A:B=40:60
道幅が広いA車と道幅が狭いB車が衝突し、A車が減速していた A:B=20:80

道路の道幅に差があった時の過失割合をみてみましょう。

道幅が異なる場合には幅の広い道路が優先されますので、道幅の狭い道路を運行していた車両側に重い過失がつきます。

一般的には道幅の狭い道路を運航していた車両側の過失割合は70%となりますが、双方の速度の状況によっても過失割合が変わります。

片方に一時停止標識がある

事故状況 過失割合
一時停止線がないA車と一時停止線があるB車が衝突し、速度が同じ A:B=20:80
一時停止線がないA車と一時停止線があるB車が衝突し、B車が減速していた A:B=30:70
一時停止線がないA車と一時停止線があるB車が衝突し、A車が減速していた A:B=10:90
一時停止線があるB車が一時停止後に交差点に侵入してA車と衝突 A:B=40:60

片方に一時停止線がある交差点で起きた事故の過失割合は、一時停止義務のある側の過失が大きくなり、基本的には一時停止義務のある側に過失割合が80%つきます。

これは、一時停止無視があったことを前提に基本割合が定められているためです。

そのため、一時停止線の前で減速をして走行していたのに事故が発生した場合などは、上記とは異なる過失割合になる可能性があります。

一時停止線のある交差点で発生した事故の過失割合について詳しくは、下記をご覧ください。

進行方向の違いによる過失の違い

交差点での事故において、進行方向の違いによる過失割合を説明します。

交差点での追い越し事故

事故状況 過失割合
追越しが禁止される交差点で、右折のA車と後からきたB車の衝突事故 A:B=10:90
追越しが禁止されていない交差点で、右折のA車と後からきたB車の衝突事故 A:B=50:50
右折のA車と後からきたB車の衝突事故のイメージイラスト

交差点において、右折のA車と後からきた直進車のB車とで事故が起きた場合、追い越し禁止の交差点であれば追越しをしたB車に90%過失がつきますが、追越し禁止がされていない交差点であれば、過失割合は50:50となります。

交差点での左折車対直進車の事故

事故状況 過失割合
左折A車と直進B車の衝突事故(同道幅、同スピード) A:B=50:50
左折A車と直進B車の衝突事故(B車の道幅が広い) A:B=70:30
左折A車と直進B車の衝突事故(A車に一時停止義務違反あり) A:B=80:20
左折A車と直進B車の衝突事故(B車は優先道路) A:B=90:10
左折A車と直進B車の衝突事故のイメージイラスト

信号のない交差点で、左折のA車と直進のB車とで事故が発生した場合の過失割合は50:50となります。

このような場合でも、双方の道路幅やスピード一時停止線の有無などが過失割合に大きく影響します。

交差点での左方右折車対直進車の事故

事故状況 過失割合
左方向右折A車と直進B車の衝突事故 A:B=60:40
左方向右折A車と直進B車の衝突事故のイメージイラスト

信号のない交差点で、右折のA車と直進のB車とで事故が発生した場合の過失割合は60:40となります。

もっとも、直進車の減速や右折車の徐行の有無等の事情により、過失割合が修正されることもあります。

過失割合の提示に納得できない時は弁護士に相談

交差点での交通事故が発生した場合、双方の状況によって過失割合が変わります。

こちらで記載をした過失割合の例は、過去の裁判例に基づくものであり、そのほかの修正要素も加味されながら実際の過失割合が決まってきます。

また、それぞれの事故状況に応じて、加害者側と被害者側で協議をして過失割合を決めていきます。

そのため、相手側保険会社と過失割合の交渉をするには、過去の裁判例を熟知し、専門的な知識を持ちながら交渉をしていく必要があります。

相手側保険会社から提示されている過失割合に納得ができない場合や、提示されている過失割合に疑問がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。