損害賠償額計算書の見方と書面の内容。【交通事故の示談交渉前にチェック】

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損害賠償計算書の正しい見方

交通事故被害の示談交渉では、保険会社から損害賠償額計算書が提示されます。示談交渉は、この損害賠償額計算書に書かれた賠償金の内訳や計算式を確認したうえで保険会社に増額を求めていくのですが、「そもそも書面をどう見たらいいかわからない」という声も聞きます。そこでこのページでは、損害賠償額計算書のサンプルを作成し、正しい見方をご説明していきます。

損害賠償額計算書とは?

損害賠償額計算書は、賠償金の示談交渉の際に、加害者の保険会社が事故被害者に対して提示するものです。
保険会社が治療費や慰謝料などの各賠償項目の金額を算出し、被害者への示談案(賠償金の支払い額)が記載されています。
損害賠償額計算書を受け取った事故被害者や弁護士は、この書類を確認し、納得できない内容があれば金額を計算し直して賠償金や過失割合の交渉を行っていきます。
損害賠償額計算書に決められたフォーマットはありません。
保険会社によって書類の名前は異なり、「賠償金のご提案」や「人身事故の損害額」と書かれた書面になっていることもあります。
これから、サンプルとして作成した一般的な損害賠償額計算書を見ながら、書類のご説明をいたします。
この書類のことを示談書と言っている方をお見かけすることもありますが、示談書は示談が成立した後に作成する別の書類のことで、示談交渉時に保険会社から受け取るのは損害賠償額計算書です。

損害賠償額計算書の見本

損害賠償額計算書に記載されていること

書面に書かれているのは、加害者の保険会社から事故被害者に支払われる賠償金の詳細です。
賠償金額は、傷害分後遺障害分に分けられています。
金額の横には、内訳や算出方法が書かれていることもあります。
傷害分と後遺障害分の下には、過失相殺額既払い額が記載されており、一番下に示談成立後、保険会社から交通事故被害者に支払われる賠償金額が記載されています
ここから傷害分、後遺障害分、過失相殺額、既払い額についてそれぞれ詳しくご説明していきます。

傷害分に記載されている内容

傷害分は、交通事故から症状固定までの期間に発生した損害(後遺障害慰謝料と逸失利益以外の賠償金が該当)の金額が記載されています。
入院や通院で必要とした費用など、さまざまな損害が記載されていますが、中でも治療費入通院慰謝料休業損害の金額や内容は示談交渉のポイントになるケースが多いです。
傷害分で記載されている各項目は次の通りです。

傷害分に記載されている各項目と詳細

項目名 詳細
治療費 入院や通院でかかった治療費及び薬代が記載されています。複数の病院で治療を受けていた場合は、病院ごとの金額などが備考として記載されています。
付添費 通院時に家族などの付き添いがあった場合に支払われるお金です。1日あたりの単価と付き添い日数をもとに算出されています。
看護費 入院時に家族などの看護を必要とした場合に支払われるお金です。1日あたりの単価と看護日数をもとに算出されています。
入院雑費 入院中に必要とした衣類や日用品などの費用が記載されています。
通院交通費 通院時にかかった交通費が記載されています。
休業損害 入通院が原因で得られなかった収入を補償するものです。備考欄に具体的な計算方法として年収(主婦や学生などは賃金センサス)と休業日数が記載されていることもあります。
入通院慰謝料 ケガをしたことに対する精神的な苦痛を補償するものです。備考には計算方法や計算の根拠がが記載されていることが多いです。計算の根拠は「赤い本」と呼ばれる交通事故の専門書や保険会社独自の基準、自賠責基準があります。
その他 上記以外に支払われる賠償金がある場合に記載されています。

後遺障害分に記載されている内容

後遺障害分は、後遺障害等級の認定を受けた際に支払われる賠償金で逸失利益後遺障害慰謝料の金額と詳細が、損害賠償額計算書に記載されています。
ケガが完治した場合や後遺障害等級が認定されなかった場合は、後遺障害分の賠償金は支払われないため、この項目は記載されていません。

後遺障害分に記載されている各項目と詳細

項目名 詳細
逸失利益 後遺障害が残ってしまったことによる将来の収入減を補償するものです。年収(主婦や学生などは賃金センサス)、労働能力喪失率、喪失期間といった逸失利益の計算に必要な数値も合わせて記載されていることが多いです。
後遺障害慰謝料 後遺障害が残ってしまったことに対する精神的な苦痛を補償するものです。「赤い本」をもとにした金額の算出理由も記載されていることが多いです。

過失相殺額や既払い額などそのほかの記載内容

一度、先ほどご紹介した損害賠償額計算書を思い出して見ましょう。
傷害分と後遺障害分の下に2つの合計金額が記載されていますが、さらにその下には、過失相殺と既払い額という項目があります。
どちらか一方、または両方が記載されている場合は、その金額を傷害分と後遺障害分の合計額から引いた金額が、相手の保険会社から交通事故被害者に支払われるお金となります。
過失相殺は、事故被害者にも過失がついている場合に、過失割合に応じて賠償金が減額されることを言います。
例えば、「傷害分」と「後遺障害分」の合計が500万円で、被害者に過失が10%あった場合、過失相殺額は以下のような計算になります。

500万円×10%=50万円
500万円-50万円=450万円
この場合には、被害者が受け取る賠償金額は450万円です。

既払い額とは、示談が成立する前にすでに保険会社が支払った金額のことです。
治療費や内払いなど、示談前に支払われている分を賠償金額から差し引いています。
賠償金額が減っているわけではありませんのでご安心ください。
損害賠償額計算書の表の一番下には「賠償金額-ー既払い額」の計算を行った金額が記載されており、この金額(差引き額)が加害者の保険会社から事故被害者に支払われるお金です。

内訳や算出方法の記載がないとき

保険会社によっては、損害賠償額計算書の各項目に対して、金額の内訳や算出方法が記載されていないことがあります。
記載されていない場合は、必ず保険会社に内容を問い合わせるようにしましょう。
というのも、損害賠償額計算書の備考欄に書かれている内容で保険会社が賠償金をどのように算出しているかわかり、示談交渉で主張するポイントが決まってくるからです。
保険会社は、最初の提示で相場よりも低額の賠償金を提示してくることが多いので、損害賠償額計算書で詳細を確認することが欠かせません。
特に、休業損害、入通院慰謝料、逸失利益、後遺障害慰謝料の金額は注意が必要です。
少しでも疑問や不安があったら、そのまま示談してはいけません
金額が妥当なのか、計算方法は適切なのかの判断は、弁護士に任せることをオススメします。
交通事故に精通した弁護士なら、妥当な金額を計算し、低額な場合には根拠を示して保険会社と増額交渉することが可能です。

妥当な賠償金を受け取るために重要な書類

損害賠償額計算書は、賠償金の示談交渉を行う上でとても重要な書類で、休業損害や逸失利益、慰謝料などは、記載されている計算方法を見て金額が妥当かどうか判断していくことになります。
内容の不明点や記載されている金額が妥当かわからないといった疑問がある場合は、弁護士に相談をして損害賠償額計算書を見せ、判断してもらうようにしましょう。