交通事故の過失割合12例。決め方と納得できない時の対処法を知ろう

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交通事故の過失割合について

交通事故被害の損害賠償請求では、慰謝料の金額と同じぐらい過失割合が大事です。過失割合は交通事故の当事者同士の責任の重さを数値化したもので、過失がつくと受け取る慰謝料の金額にも影響しますので、納得のいく過失割合で示談をするようにしましょう。
ここでは、過失割合の決まり方や、事故別の過失割合例、提示された過失割合に納得できない時の対応についてご説明します。

交通事故における過失割合とは?

はじめに過失割合についてご説明いたします。

交通事故が発生すると、加害者と被害者の間で、事故の状況に合わせてお互いの落ち度(責任)の割合を決めることになっています。

これが過失割合です。

被害者に一切の落ち度がない場合、過失は「加害者100:被害者0」となります。

いっぽうで被害者にも落ち度があったと判断されると、「加害者90:被害者10」、「加害者70:被害者30」といったように、被害者にも一定の過失が付きます。

被害者が車やバイクなどに乗っていた場合、停車中だと過失がつかないことも多いですが、走行中に事故が発生した場合は、被害者にも過失がつくケースが多いです

被害者が歩行者や自転車に乗っていた場合でも過失が付く可能性はあります。

事故の相手方に原因があるのは明らかな場合でも、被害者に過失がつく可能性はあります。

それは、道路を通行する際は、自動車、バイク、自転車、歩行者のすべてに注意義務があるとされていて、避けようがなかった事故を除き、被害者にも注意義務に欠ける部分があった(もっと注意していれば事故を避けられたかもしれない)と判断されることがあるからです。

過失割合は加害者と被害者による交渉で決まる

つぎに、過失割合の決め方をご説明します。

過失割合は、交通事故の加害者と被害者が交渉を行い決めます。

「警察は過失割合を決めないの?」という声を聞くこともありますが、過失割合の決定に警察が介入することはありません(警察が作成した書類を参考にすることはあります)。

過失割合は、基本的には加害者の保険会社が提示してきます。

ただし、その数値で決定ではありません。

提示された過失割合に納得できない時は、慰謝料と同じように示談交渉を行うことができます。

保険会社や弁護士は、交通事故の専門書籍に掲載されている過去の裁判例を参考に過失割合の交渉を行います。

事故の状況別に、専門書籍に掲載されている過失割合をご紹介していきます。

過失割合1【歩行者対自動車の事故】

事故の詳細 過失割合
交差点で歩行者が青信号で横断を開始、青信号で右左折をした自動車と衝突 歩行者0:自動車100
交差点で歩行者が黄信号(点滅)で横断を開始、青信号で右左折をした自動車と衝突 歩行者30:自動車70
歩行者が信号や横断歩道がない道路を横断し、直進自動車と衝突 歩行者20:自動車80

上の表は、歩行者対自動車の交通事故での過失割合の一例です。

一番上の例のように、歩行者が青信号を横断していて事故にあった場合は、歩行者の過失は0になることが多いです。

いっぽうで、点滅信号赤信号で横断を開始したら、歩行者にも過失がつきます。

また、横断歩道がないところで道路を横断したような場合も過失がつきます。

横断歩道がある場所でも、線の外側を渡っていたら、歩行者に過失がつくことがあります。

このように、歩行者と自動車の事故では、お互いの信号の色や横断した場所などの事情で過失割合が変わります。

過失割合2【自動車対自動車の事故】

事故の詳細 過失割合
自動車が赤信号で停車中、後続車に追突された 停車中の自動車0:後続車100
自動車が青信号で交差点を直進中に、青信号で右折をした対向車と衝突 直進車20:右折車80
自動車が信号のない交差点(同じ道幅)を直進、右側から直進してきた自動車と衝突 左方車40:右方車60

自動車対自動車の事故での過失割合の一例です。

まず、停車中の追突事故のようなもらい事故であれば、停車中の自動車に過失はつきません

いっぽうでお互いが走行中の事故では、双方に過失がつくケースがほとんどです。

信号の色や自動車の進行方向、道路標識、道幅などによって加害者と被害者の立場が決まってきます。

過失割合3【バイク・原付対自動車の事故】

事故の詳細 過失割合
バイクが赤信号で停車中に後続車が追突 バイク0:自動車100
バイクが青信号で交差点を直進中に、青信号で右折をした対向車と衝突 バイク15:自動車85
バイクが信号のない交差点(同じ道幅)直進し、右側から直進してきた自動車と衝突 バイク30:自動車70

こちらはバイク(原付含む)対自動車の事故の過失割合の一例です。

自動車対自動車の場合と同様のシチュエーションの事故を例に挙げていますが、バイク事故の場合、自動車対自動車の事故に比べてバイク側の過失が5〜10%程度軽くなる傾向があります。

これは、バイク対自動車で事故が発生すると、バイク側のほうがケガをしやすいことなどが理由です。

バイク事故の過失割合は、下記のページで状況別に詳しくご説明しています。

過失割合例4【自転車対自動車の事故】

事故の詳細 過失割合
交差点で自転車が青信号で横断を開始、青信号で右左折をした自動車と衝突 自転車10:自動車90
自転車が信号のない交差点(同じ道幅)を直進、右側から直進してきた自動車と衝突 自転車20:自動車80
自転車が車道の左端を直進中、前方の自動車が左折し、巻き込み事故にあう 自転車10:自動車90

自転車対自動車の交通事故での過失割合の一例です。

自転車は、歩道を走る場合と車道を走る場合がありますが、歩道や横断歩道を走行中の事故では、歩行者だった場合に比べて自転車に過失がつくケースが多いです。

また、車道を走行中の事故では、自転車にも過失はつくものの、自動車同士やバイク事故に比べて自転車の過失は軽くなる傾向があります。

過失割合が10対0と9対1の違いで慰謝料が変わる

過失相殺で慰謝料が減額に

過失割合が10対0の場合と9対1や8対2の場合は被害者にとって大きな違いがあります。

それは、被害者に過失がついていると、示談交渉などで慰謝料が決定した後に、受け取る慰謝料が過失の分だけ減額されてしまうからです。

これを、過失相殺と言います。

過失割合が「加害者90:被害者10」だった場合には、賠償金額の10%が過失相殺されます。

過失相殺がどの程度影響するのか、具体例を挙げて見ていきましょう。

例1)賠償金額500万円、過失割合9対1の場合

500万円−(500万円×10%)=450万円

受け取り金額が50万円減額!

例2)賠償金額800万円、過失割合7対3の場合

800万円−(800万円×30%)=560万円

受け取り金額が240万円減額!

このように、被害者の過失が大きければ大きいほど、受け取る金額が減ってしまいます。

そのため交通事故被害の損害賠償請求では、妥当な慰謝料を勝ち取るのと同じくらい、妥当な過失割合が認められることが大切なのです。

過失割合に納得できない時にできることは?

いざ、保険会社から過失割合が提示されると、自分の過失を聞いて「正しいかわからない」、「過失割合に納得がいかない」といった疑問を抱くものの、「どうすれば過失割合を変更できるかわからない」と思われる方が多いようです。

提示された過失割合に疑問を抱いたら、保険会社に言われたままで示談しないことがまず大事です。

そのうえで、次のことを行っていく必要があります。

保険会社との示談交渉で過失の修正を求める

過失割合は保険会社が決めるものではなく、加害者と被害者が合意し、初めて決定するものです

保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合は、示談交渉で変更を求めることができます。

しかし、ただ「この過失割合には納得できない」と言うだけでは、保険会社は変更には応じてくれません。

保険会社の主張を覆すような根拠が必要です。

そのため、残りの2つのことを行っていきます。

過去の裁判例を確認し、妥当な過失を主張する

過失割合は、「民事交通事故における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ38号)や損害賠償額算定基準(赤い本)という交通事故の専門書籍を参照に決めていきます。

これらの専門書には、先ほどご紹介したような状況別の過失割合などがたくさん掲載されていて、自分の事故の状況と専門書に記載されている裁判例を照らし合わせ、正しい過失割合を判断していきます。

その過失割合が保険会社の提示と異なれば、裁判例を根拠に主張することで、変更が認められる可能性があります。

信号の色や速度、進行方向などはもちろん、当事者双方の事故直前からの動き、時間帯、場所など、ほんのわずかな違いで過失割合は変わることがあります。

事故が発生した状況と過去の裁判例を事細かく照らし合わせることが大事です。

実況見分調書を取り寄せ、交通事故の詳細を把握

事故の状況と過去の裁判例を照らし合わせる際は、警察が作成した実況見分調書などの確認が必要なこともあります。

実況見分調書は、加害者と被害者で主張が食い違う場合に重要な役割を果たすことがあります。

たとえば、加害者は青信号を主張していたけど、実況見分調書に「加害者は黄信号で交差点に進入していた」など、加害者の落ち度が記載されていれば、実況見分調書を証拠に、過失割合が妥当ではないと主張していくことができます。

同様に、事故現場が映った防犯カメラの映像なども証拠になることがあります。

過失の修正を求めるなら交渉は弁護士に相談

ご説明した過失割合の示談交渉、専門書の確認、実況見分調書の取り寄せなどの対応には経験や専門的な知識が必要です。

過失割合の変更は弁護士に相談したうえで、進めていきましょう。

交通事故被害に力を入れて取り組んでいる弁護士なら、過失割合の正しい判断や、根拠をもとにした的確な交渉をすることができます

また、弁護士は「弁護士会照会」という制度を利用し、警察から実況見分調書などの記録を取り寄せることができます。

過失割合に納得できないときは、そのまま示談するのではなく、弁護士へのご相談をおすすめします。