交通事故後の対応。事故発生から示談交渉までの流れをわかりやすく解説

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交通事故後の対応。事故発生から示談交渉までの流れをわかりやすく解説

交通事故はあまり頻繁に遭遇するものではないため、特に初めて交通事故の被害に遭われた方は、「これからどのような対応をしなければならないのか」「きちんと治療費や慰謝料は支払われるのか」など、わからないことがたくさんあると思います。
交通事故の当事者には、事故直後からやるべき対応がたくさんあり、対応を間違えると後々困ってしまうこともあります。
今回は、交通事故の被害に遭った方に向けて、事故後の流れを解説します。
事故直後の対応や、治療期間中にすべきこと、示談交渉のポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

事故発生から示談交渉までの全体的な流れ

交通事故でケガをした際の、事故発生から示談交渉までの全体的な流れはこちらです。

事故発生から示談交渉までのフロー図

事故発生から解決までの期間は、ケガの治療期間を3カ月とした場合、およそ4〜6カ月であることが多いです。

事故直後の対応

交通事故が起きた直後に対応しなければならないことをご紹介します。
交通事故の被害に遭った時は、無理をせずできる範囲の対応を行いましょう。
実際の手順に沿って説明していきます。

ケガ人を救護する

交通事故が発生した直後、最優先に考えなければならないのは、ケガ人の救護です。
事故の相手や周囲の人々がケガをしていないか確認し、ケガ人がいる場合は安全な場所に移し救急車を呼んでください。
ケガ人が意識不明であったり、頭や首に出血や痛みがあったりなど動かすほうが危険だと判断した時は、ケガ人を無理に移動させず発煙筒などで周囲の安全を確保しましょう。
ただし自分がケガを負っている場合は、くれぐれも無理に他の人を救護しようとせず安静にしておいてください。

警察に連絡をする

ケガ人の救護や周囲の安全が確保できたら、警察に連絡してください。
自分がケガで動けなかったり、携帯電話が事故で壊れたりして通報できない時は、周りの人に頼みましょう。

警察に連絡し事故の発生を届け出ることで、後日、「交通事故証明書」の発行を受けることができます。
交通事故証明書は保険金請求手続きの際に必要な書類なので、必ず届け出てください。
ケガをして事故直後に届出ができなかった時は、医師の診断書を持って警察に行きましょう。
警察に連絡せずに進めようとすると、交通事故証明書が発行されず、損害賠償金を請求したくても事故の事実を証明できないことになるので忘れず連絡しましょう。

保険会社に連絡をする

警察へ連絡が終わったら、自分が契約している保険会社にも連絡をしましょう。
保険会社に連絡すると、下記のことなどを聞かれるので、事前に確認できるものがあれば確認しておきましょう。

  • 事故日
  • 事故場所
  • 事故の様子
  • ケガの有無
  • 相手の個人情報
  • レッカー車の手配

一部情報がわからなくても保険会社は対応してくれますので、わからない点があっても、連絡を躊躇する必要はありません。
ご自身に過失がないと思われる事故や、歩行者で事故にあった場合であっても、ご自身の自動車保険からケガについての補償を受けられる可能性がありますので、事故の連絡をしておきましょう。

また事故で自動車が損傷して動けなくなった場合、レッカー車を手配してもらいましょう。
ただし警察の到着前に車両をレッカーすると、証拠を保全できなくなります。
証拠が足りず示談交渉や裁判で不利になる可能性があるため、現場検証が終わってからレッカー移動しましょう。

事故相手と情報を交換する

警察や保険会社に連絡をした後は、示談を行うため加害者と情報を交換します。
交換すべき主な情報はこちらです。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 自動車ナンバー
  • 勤務先の情報
  • 保険会社と契約番号

相手の氏名や住所は、運転免許証や車検証などの写真を撮影しデータに残しておくとよいでしょう。
勤務先の住所や連絡先は可能であれば名刺交換をしておいてください。

また、相手が誰かから車を借りていた場合は、所有者にも損害賠償を請求できることがあるため、車の所有者の情報も受け取っておきましょう。
事故の目撃者にも連絡先を聞いておくと、後で事故の状況を証言してもらう場合に役に立ちます。

証拠の保全

連絡や情報交換が一段落したら、警察が到着するまで証拠となりそうな物を保全しておきましょう。
車両全体や損傷部分、現場の様子など、事故の状況がわかるように写真を撮影したり、ドライブレコーダーのデータを保管・保存したりします。
なお、警察が作成する実況見分調書は有力な証拠となり、裁判に発展した場合でも証拠として提出することがあります。

入院中・通院中に注意すべきこと

ケガで入院・通院している時に注意すべきことをご説明します。
きちんとケガの治療ができるように、また損害賠償金を受け取れるように確認してみましょう。

入院・通院

事故直後は動けるケガでも救急車を呼び、医師の診断に従って入院・通院をしてください。保険会社とのやりとりや示談交渉などは後からできるので、けがの治療を優先しましょう。

ケガがなくても病院に行く

たとえケガの自覚症状がなくても、むちうちや腰椎捻挫の可能性があるため必ず受診してください。
事故から期間が経過した後にケガが発覚しても、その事故によるケガだと証明できず医師に診断書を書いてもらえないことがあります。
ご自身が無事であることを確認するためにも、早めに医師に診てもらいましょう。

健康保険を利用する

事故によるケガの治療にも健康保険を適用できます。
被害者にも過失がある場合、過失割合による負担額を軽減できるので利用したほうがよいでしょう。
負担する治療費は3割になります。

労災保険を利用する

業務中や通勤中に交通事故が発生した時は、労働者災害補償保険(労災保険)を利用すると、労災保険給付を受け取れます。
労災保険を請求するには、労働基準監督署に「第三者行為災害届」という書類を提出します。
注意すべきは、労災保険と健康保険の併用ができない点です。
すでに健康保険を利用した場合は、労災保険に切り替えられるので手続きをしてください。

整骨院は医師に相談

事故のケガを病院以外でも治療したい時は、担当医の許可を得てください。
許可なく整骨院で治療しても、その治療費を損害賠償として請求できないおそれがあります。
通いたい方は一度医師に相談してみましょう。

完治または症状固定まで通院を続ける

ケガの完治、または症状固定の診断を受けるまでは通院を続けましょう。
症状固定とは、ケガの症状が残っているが、一般的な治療を施してもそれ以上良くなる見込みがない状態を言います。
ケガによっては完治や症状固定まで数か月~半年かかることもあります。
治療費や慰謝料などの損害賠償金の正確な金額を算出するためには診断書が必要になりますので、医師の指示に従って治療を継続してください。

やってはいけないこと

治療費や慰謝料などを十分に受け取るためには、保険会社の症状固定についての一方的な提案を受け入れてはいけません。
交通事故のケガの治療中に、保険会社から症状固定をして治療費を打ち切ろうと提案されることがあります。
症状固定の診断を下すのは保険会社ではなく医師ですので、くれぐれも医師の診断に従って進めてください。

後遺症が残ったら「後遺障害」の等級認定手続きを行う

後遺症が残っている状態で医師が症状固定と診断した場合、後遺障害の等級認定手続きをする必要がある

痛みやしびれなどの後遺症が残っている状態で医師が症状固定と診断した場合、後遺障害の等級認定手続きをする必要があります。
後遺障害の等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を受け取れます。
どのような流れで後遺障害等級が認定されるのかご説明します。

後遺障害診断書の作成

後遺障害等級の認定手続きには、医師が作成した後遺障害診断書が必要です。
後遺障害診断書は通常の診断書とは異なる書類で、治療の終了後に後遺障害等級の申請を行う場合に医師に依頼して作成してもらいます。
後遺障害診断書に記載するために症状に応じた検査を受けることもあります。

後遺障害等級認定の申請

後遺障害の等級認定を申請する方法は2つあります。

  • 事前認定
  • 被害者請求

「事前認定」は相手側の保険会社が手続きを進め、「被害者請求」は自分(被害者)側が手続きを進めるという違いがあります。
事前認定は被害者の手間がかからず認定可否までの期間が短いという利点がありますが、被害者自身や代理人弁護士が提出資料を確認することができません。
保険会社としては、等級が上がると支払う金額が増えるため、協力的ではない可能性も考えられます。
被害者請求は専門的な知識が必要なため、被害者自身が行うのではなく弁護士に依頼するケースが多く、この場合、弁護士が確認しながら後遺障害等級を申請するので安心です。

異議申立

異議申立とは、後遺障害が認定されなかった時や、認定された後遺障害の等級に不満がある場合に、再審査してもらう手続きです。
異議申立で結果を覆すには根拠とともに申請結果に誤りがあることを指摘しなければなりません。
損害保険料率算出機構が審査をした場合、異議申立の回数には制限がなく、納得のいくまで何度でも申請できます。
しかし、自賠責保険・共済紛争処理機構が出した結果には、異議申立を行うことはできず、不服がある場合は訴訟を行う必要があります。

保険会社から慰謝料などが提示されたら示談交渉を行う

交通事故のケガが完治、または後遺障害の等級認定が完了すると、相手側の保険会社から損害賠償金や慰謝料が提示される

交通事故のケガが完治、または後遺障害の等級認定が完了すると、相手側の保険会社から損害賠償金や慰謝料が提示されます。
提示された慰謝料などの金額が不十分な場合、十分な金額を受け取れるように示談交渉を行います。

根拠があれば慰謝料などは増額できる可能性が高い

保険会社から提示された慰謝料などは、交渉により増額できる可能性が十分にあります。
保険会社は自賠責保険が定める最低限の慰謝料などを提示してくる場合がありますが、交渉次第では提示額の2倍以上の金額に増額できる可能性があります。
ただし示談交渉により慰謝料などを増額するには根拠が必要です。
根拠をそろえるには専門的な知識が必要なので、自分一人で用意するのは難しいかもしれません。
証拠をそろえるためには弁護士などの力を借りましょう。

保険会社は加害者側の立場だと理解する

慰謝料などを提示する保険会社は、加害者側の立場で対応します。
そのため、できるだけ損害賠償や慰謝料を少なく設定しようとします。
示談交渉でも被害者の主張をすんなり受け入れるとは限りません。
希望通りの金額に近づけるには、交渉の技術や経験が求められます。

示談はやり直しが効かないのでしっかり行う

金額が確定し、示談交渉が一度まとまり示談が成立すると、やり直しができません。
保険会社は慰謝料などが増額される前に交渉を切り上げようとすることもあります。
示談を終える時は、納得できる金額まで増額されてなければなりません。

慰謝料などの損害賠償金請求は弁護士に任せたほうが安心

慰謝料などの損害賠償金請求の示談交渉は弁護士に任せたほうが増額できる可能性が高いです。
弁護士が入ることで、裁判基準という、本来裁判をした場合に受け取れる損害賠償額を基準に交渉が行なわれます。
また、証拠を扱う専門知識や交渉の技術があるため、交渉をスムーズに進められます。
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかりますが、ご自身の任意保険に弁護士特約が付いていれば、保険会社が費用を負担してくれます。
また、たとえ自分で弁護士費用を支払っても受け取れる損害賠償金額が多くなるケースは多いです。

まとめ

今回は交通事故が発生した時の対応を流れに沿って解説しました。
事故直後には、ケガ人の救護や警察や保険会社への連絡、相手との情報交換などを行います。
ケガがなくても病院へ行き、完治・症状固定まで通院し、診断書を作成してもらいます。
後遺障害が残った場合、等級認定手続きを行い、最後に示談交渉で慰謝料などの損害賠償額を確定します。
交通事故は何度も経験することではないので、対応に慣れていない方がほとんどです。
交通事故の当事者には、事故直後からやるべき対応がたくさんあり、対応を間違えると後々困ってしまうこともあります。
抜け漏れがないように逐一確認しながら対応していく必要があります。