後遺障害の逸失利益とは?請求できるケース、計算基準を解説

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後遺障害が残った場合の逸失利益の請求

交通事故でケガをした場合、加害者に対して治療費や慰謝料などの損害賠償請求を行います。後遺障害が残ってしまった場合は後遺障害等級の認定を受けた上で、後遺障害慰謝料と逸失利益の請求が別途可能です。後遺障害が原因で今後の仕事や収入に影響が出てしまった方は、逸失利益をきちんと請求することが大切です。
本記事では、後遺障害の逸失利益の概要や、計算方法などを解説します。

後遺障害とは?後遺障害が認定される場合と請求可能なお金

まずは後遺障害の概要と後遺障害の等級が認定された場合に請求できるお金について解説します。

すでにご存知の方は次の項目まで読み進めていただいて問題ありません。

後遺障害とは?後遺障害の概要と認定方法をわかりやすく説明

交通事故における後遺障害とは、適切な治療を受けていたにも関わらず、痛みや麻痺などの後遺症が残ってしまい労働能力が低下した状態のことを指します。

後遺症が残っているだけでなく、これらの状態になっていることを医学的に証明した上で、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

損害保険料率算出機構という機関に必要書類を提出して、後遺障害の認定基準をクリアしていると判断されれば、後遺障害等級が認定されます。

後遺障害等級の認定については、下記の記事で詳しくご説明しています。

後遺障害が認定された場合に請求できるお金

後遺障害等級が認定された場合は、以下のお金を請求できる可能性があります。

傷害(ケガをしたこと)で請求できる主な補償 治療費、薬代や通院交通費の実費など
入通院慰謝料
休業損害
後遺障害の認定を受けると請求できる補償 後遺障害慰謝料
逸失利益

後遺障害等級が認定された場合、傷害部分で支払われる治療費や慰謝料、休業損害などにプラスして、後遺障害慰謝料逸失利益を請求可能です。後遺障害慰謝料は、入通院慰謝料とは別に請求できます。

後遺障害の逸失利益とは?逸失利益の概要と算出方法

後遺障害の逸失利益の概要と逸失利益の計算方法を解説します。

後遺障害の逸失利益とは

後遺障害の逸失利益とは、後遺症によって労働能力が低下しなければ将来にわたって得られるはずだった利益のことを指します。

たとえば、「事故によって足に後遺症が残り、事故前の職場では働くことができなくなり、給与が低下した」という事例で考えてみましょう。

事故の被害者は、事故前と比較すると負担の軽い作業に従事せざるを得なくなり、その分収入が減少してしまいます。

すると、生涯で受け取る収入が低下することになります。

慰謝料や治療費などではこの損失を補填することはできません。

それを賠償するのが逸失利益です。

逸失利益の算出方法

逸失利益は、基礎収入労働能力喪失率中間利息控除係数をかけることで算出されます。

基礎収入、労働能力喪失率、中間利息控除係数については後ほどご説明いたします。

逸失利益は、被害者本人の年齢や職業、後遺障害等級などによって金額が大きく増減します。

逸失利益の算出は、算定基準となる数字を計算するだけでも複雑ですので、弁護士に相談することをおすすめします。

基礎収入

基礎収入の算定方法は、給与所得者、事業所得者、学生などの属性によって算定方法が異なります。

30才以上の給与所得者の場合は現在の収入を算定の基礎とし、30才未満の場合は、全年齢平均賃金という基準に従って算定されます。

労働能力喪失率

労働能力喪失率は、後遺障害により失われた労働能力を数値化したものです。

労働能力喪失率は、労災保険の基準が準用されており等級に応じて喪失率が規定されています。

1級の場合は100%、14級の場合は5%です。

後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

こちらの基準は、自賠責保険に対して後遺障害の逸失利益を請求する場合に用いられ、自賠責保険の範囲を超えた場合でも多く使用されています。

ただし、この喪失率に合致しないものについては個別に算定することも可能です。

中間利息控除係数

中間利息控除係数とは、利息によって得られる利益を差し引く係数のことを指します。

逸失利益は、将来受け取るはずだった収入を前払いで一括して受け取ることができます。

その分を銀行などに預けておけば、利息によって利益がでるわけです。

この利息分の利益を差し引くための係数が中間利息控除係数です。

中間利息控除係数は、一般的にはライプニッツ係数を用いて算出されます。

令和2年4月1日以降に発生した事故については、法定利率3%のライプニッツ係数が適用され、それ以前の事故については法定利率5%のライプニッツ係数が適用されます。

適正な後遺障害の逸失利益を受け取るためにできること

後遺障害の逸失利益について、適正な金額を請求するための方法を解説します。

正当な等級での後遺障害等級認定を受けること

後遺障害の逸失利益を請求するために、まず重要なのは後遺症に応じた適切な後遺障害等級の認定を受けることです。

後遺障害等級が認定されなければ、いくら症状が残っており仕事に支障をきたして収入が減少したとしても、逸失利益を請求することはできません。

また、後遺障害等級の認定を受けたとしてもその等級が症状に応じたものでなければ、十分な補償を受けることができません。

適正な逸失利益を受け取るためには、症状に見合った後遺障害等級の認定を受けることが前提となります

弁護士に交渉を一任すること

逸失利益に関する交渉は弁護士に一任

後遺障害等級の認定を受けて適正な逸失利益を受け取るための近道は、弁護士に交渉を一任することです。

弁護士に逸失利益に関する交渉を一任するメリットは以下の2点です。

適正な等級で後遺障害等級が認定される可能性が高まる

弁護士が後遺障害に関する手続を行うことで、正当な後遺障害等級が認定される可能性が高くなります

弁護士は、被害者請求という保険会社に直接後遺障害等級の認定を請求する手続を行いますし、後遺障害等級の認定を受けるために必要な書類や、検査についても熟知しているため、後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高まるのです。

事故についての交渉から解放される

弁護士に逸失利益の交渉を依頼すると、交通事故の示談交渉のすべてを弁護士に任せることができます。

後遺障害等級の認定だけでなく、逸失利益や慰謝料の算定、請求まで弁護士が行いますので、被害者の方が手間と時間をかける必要はありません。

慰謝料については、弁護士が交渉をすることで裁判所基準という最も高い慰謝料算定基準での請求が可能となります。