右直事故・サンキュー事故の過失割合。右折車と直進車の責任はどう判断する?

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右折事故の一種である右直事故とサンキュー事故の過失割合

交差点での交通事故の中で多いのが右直事故です。右直事故においては右折車に重い過失割合がつくケースが多いものの、信号の状況や速度など、事故状況によって過失割合が変動します。また、右折を譲られたことで発生するサンキュー事故も右折事故の一種です。
こちらでは、右直事故において過失割合がどのように変動するのか解説していきます。

右直事故とは?

交差点内で起きる自動車同士(もしくは自動車対バイク)の交通事故で大半を締めると言われているのが右直事故です。

右直事故とは、交差点で直進車と反対車線の右折車が接触する交通事故のことをさします

たとえば、対面で走行してきた直進車と右折車が接触するケースもあれば、横方向から直進車や右折車がきて衝突をするケースなどもあります。

右直事故において、右折車と直進車のどちらにどれだけの過失割合がつくかは、事故のケースによっても異なります。

損害賠償請求をする際、自分についた過失割合だけ受け取る慰謝料が減るため、右直事故においても適切な過失割合を認めてもらうことが大切です。

右直事故ではどのように過失割合が決まっていくのか、以下で確認をしてきましょう(以下、想定しているのはすべて、直進車と右折車がそれぞれ対向方向から交差点に進入した場合になります)。

右直事故の過失割合(自動車同士)

自動車同士における、右直事故の過失割合を確認していきましょう。

自動車同士であったとしても、信号機の有無や信号無視などによって過失割合は異なってきます。

まずは、信号機がある交差点における自動車同士の右直事故の過失割合をご案内します。

信号機がある交差点での右直事故の過失割合

どちらも青信号のケースで起こる右直事故のイメージイラスト
事故詳細 過失割合
(直進車:右折車)
直進車と右折車がともに青信号で交差点に進入 20:80
直進車と右折車がともに黄色信号で交差点に進入 40:60
直進車と右折車がともに赤信号で交差点に進入 50:50
直進車は黄色信号で交差点に進入し、右折車は青信号で進入したあと黄色信号で右折 70:30
直進車は赤信号で交差点に進入し、右折車は青信号で進入したあと赤信号で右折 90:10
直進車は赤信号で交差点進入し、右折車は黄色信号で進入したあと赤信号で右折 70:30
直進車は赤信号で進入し、右折車は青矢印もしくは青信号で右折 100:0

どちらも青信号のケースで起こった右直事故の過失割合は直進車20:右折車80となります。

これを基本割合とし、お互いの信号の状況によって上記のように過失が修正されます。

基本的には、右折車の過失割合が多くなりますが、直進車側が信号無視をしていれば直進車の過失割合が多くなることになります

ただし、上記の過失割合はあくまで原則的なものなので、個別の状況ごとに過失割合は修正されることがあります。

右直事故の過失割合(自動車対バイク)

次に自動車とバイクにおける、右直事故の過失割合を確認していきましょう。

自動車とバイクにおける右直事故であっても、信号機の状況が過失割合に関わってきます。

また、バイクと自動車のどちらが右折車であったのかによっても状況は異なります。

以下にてケース別に記載していきます。

信号機がある交差点での直進バイクと右折自動車の事故の過失割合

信号機がある交差点での直進バイクと右折自動車の事故のイメージイラスト
事故詳細 過失割合
(直進バイク:右折車)
直進バイクと右折車がともに青信号で交差点に進入 15:85
直進バイクと右折車がともに黄色信号で交差点に進入 30:70
直進バイクと右折車がともに赤信号で交差点に進入 40:60
直進バイクは黄色信号で交差点に進入し、右折車は青信号で進入し、黄色信号に変わる 60:40
直進バイクは赤信号で交差点に進入し、右折車は青信号で進入したあと赤信号に変わる 80:20
直進バイクは赤信号で交差点に進入し、右折車は黄色信号で進入したあと赤信号で右折 60:40
直進バイクは赤信号で交差点に進入し、右折車は青矢印もしくは青信号で右折 100:0
  • 直進バイクと右折車がそれぞれ対向方向から交差点に進入した場合を想定しています。

信号機がある交差点での右折バイクと直進自動車の右直事故

信号機がある交差点での右折バイクと直進自動車の右直事故のイメージイラスト
事故詳細 過失割合
(直進車:右折バイク)
直進車と右折バイクがともに青信号で交差点に進入 30:70
直進車と右折バイクがともに黄色信号で交差点に進入 50:50
直進車と右折バイクがともに赤信号で交差点に進入 60:40
直進車は黄色信号で交差点に進入、右折バイクは青信号で進入し、黄色信号で右折 75:25
直進車は赤信号で交差点に進入、右折バイクは青信号で進入し、赤信号で右折 90:10
直進車は赤信号で交差点に進入し、右折バイクは黄色信号で進入したあと赤信号で右折 80:20
直進車は赤信号で進入し、右折バイクは青矢印もしくは青信号で右折 100:0

直進バイクと右折車の事故の場合、直進車と右折バイクの事故の場合それぞれの過失割合をご紹介いたしました。

自動車同士の右直事故と比較すると、バイク側の過失が5%から10%程度、軽くなっています。

事故状況にもよりますが、自動車対バイクの事故では、自動車同士の事故よりもバイク側の過失が少し軽くなることが多いので、バイクで右直事故の当事者になった方はその点を考慮して正しい過失割合を判断する必要があります。

ただし、上記の過失割合はあくまで原則的なものなので、個別の状況ごとに過失割合は修正されることがあります。

信号機のない交差点での右直事故

信号機のない交差点において、右直事故が発生したときに過失割合はどのようになるのでしょうか?

こちらでは、信号機のない交差点における過失割合を記載していきます。

信号機のない交差点で起きた車同士の右直事故の過失割合

事故詳細 過失割合
(直進車:右折車)
直進車と右折車が交差点に進入し衝突 20:80

信号機のない交差点で、車同士の衝突事故があった場合、直進車にも過失が2割つき、直進車対右折車は20:80となります。

信号機のない交差点で起きた車対バイクの右直事故の過失割合

事故詳細 過失割合
(直進側:右折側)
直進バイクと右折車が交差点に進入し衝突 15:85
直進車と右折バイクが交差点に進入して衝突 30:70

信号機のない交差点で、車とバイクによる衝突事故があった場合、右折車側に重い過失がつくことに変わりはありませんが、自動車同士の事故と比べ、バイクが直進車の場合は右折した車の過失が重くなり、バイクが右折車の場合は過失が軽くなります。

以上が信号機のない交差点での右直事故の基本的な過失割合となりますが、交差点の状況(道路の狭さ等)によっては、上記過失割合が修正されることもあります。

サンキュー事故での過失割合

サンキュー事故のイメージイラスト

サンキュー事故とは、道を譲ったことにより発生する交通事故をさします。

譲ってもらった車両が「ありがとう(サンキュー)」と感謝する状態で発生する交通事故のため、サンキュー事故と呼ばれており、道を譲ってもらった右折車が交差点に進入してくるときに、道を譲ってくれた車両によって死角ができ、その後ろから直進してきた車両に気がつくのが遅れ、衝突してしまったケースなどが当てはまります。

道を譲ってくれた車両がいるため少々わかりづらいですが、サンキュー事故の多くは右折車と直進車による右直事故です。

そのため、直進車と右折車によるサンキュー事故の過失割合は、先ほどご紹介した右直事故の過失割合をもとに判断していきます。

自動車同士の右直事故で、どちらも青信号の状況で起こったサンキュー事故であれば、過失割合は直進車20:右折車80となります(その他過失の修正要素がない場合)。

「道を譲ってくれた車両には過失はつかないの?」と思う方もいるかもしれませんが、基本的には、道を譲ってくれた車両は事故の当事者とはならないため、過失がついたり損害賠償請求の対象となることはありません(道を譲ってくれた車両にも衝突した場合などを除く)。

右直事故の過失割合で過失が変わるポイント

交通事故の過失割合、上記で紹介をしてきた基本割合をベースに、個別事情を考慮して最終的な過失割合を決定していきます。

こちらでは、右直事故における過失割合の決定に影響を及ぼす事柄を紹介していきます。

右直事故の過失を左右する修正要素

修正要素 修正要素 過失の修正
直近右折 対向直進車が交差点に入る付近まできてから、右折車が右折を開始。 右折車の過失が重くなる
既右折 直進車が交差点に進入する時には右折車が右折を完了している、またはそれに近い状態。 直進車の過失が重くなる
早回り右折 右折車が、交差点の中心の直近の内側、または道路標識等に指定された部分を進行せずに右折すること。 右折車の過失が重くなる
大回り右折 右折車が、あらかじめ道路の中央に寄らず右折をすること。 右折車の過失が重くなる
明らかな先入 直進車または右直車のどちらかが一方が、明らかに早く交差点に進入していた。 先入りしていた車両の過失が軽くなる
合図なし ウインカーをつけずに右折した。 右折車の過失が重くなる
徐行なし 徐行運転が必要な場所において徐行をしないこと。 徐行しなかった車両の過失が重くなる

右直事故で当てはまる可能性がある過失割合の修正要素をご案内しました。過失の修正は、基本的には5~20%の範囲で行われます。

過失割合が修正されるか否かによって受け取る慰謝料の金額が変わりますので、上記のような事情がある場合は、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像などを根拠に過失割合の修正を求めていくようにしましょう

過失割合で気になることは弁護士に相談

お互いが走行中に起きた交通事故では、信号の状況や交差点に進入したタイミングなどで双方の主張が異なり、過失割合の主張が食い違うケースが多くあります。

相手保険会社から提示された過失割合に納得できないなど、右直事故の過失割合で少しでも気になることがあれば、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、裁判例などをもとに適切な過失割合を判断することができ、相手が主張する過失割合が適切でないケースでは、過失割合の変更を求めて相手方と交渉をしていくことも可能です。

おひとりで悩まず、弁護士に相談して正しい過失割合の認定、納得のいく解決を目指していきましょう。