交通事故における慰謝料請求に大きな影響を及ぼす過失割合ですが、これまでの生活で過失割合に触れる機会がなく決め方や詳細がよく分からないという方も多いのではないでしょうか。妥当な慰謝料を受け取るには、過失割合についても正しい知識を身につけることが大事です。
こちらの記事では、過失割合の決め方や過失割合を決める際の流れ、過失割合が出た際の注意点などを解説していきます。
交通事故の過失割合とは?
交通事故における過失割合とは、事故の原因になった不注意や過失・責任を数値化したものです。
10:90や30:70など、合計が100になる数字で表され、数字の大きいほうが責任が重くなります。
そして、慰謝料請求においては、自分にどの程度の過失がついているのかが重要となります。
まずは、過失割合が事故被害者の慰謝料請求にどう影響をするのかをご説明していきます。
事故被害者だから過失0とは限らない
交通事故において責任の割合を示す過失割合ですが、被害者にまったく落ち度がない事故であれば、被害者の過失割合がゼロとなる事故もあります。
しかし、そのような事故を除けば、事故被害者であっても責任が振り分けられ過失がつくことも珍しくありません。
たとえば、赤信号で停車中の追突事故であれば被害者に過失がつかないことが多いですが、急ブレーキをかけて追突された事故だったとしたら、被害者にも過失がつくケースが多いです。
被害者が歩行者や自転車の場合でも、車の場合に比べて割合が低いことも多いですが、過失がつくことはあります。
事故被害者であれば、過失割合はまったくつかないというわけではなく、状況に応じて過失割合がつくのです。
過失相殺により、慰謝料が減額される
交通事故における過失割合は、慰謝料など賠償金の支払いに影響を及ぼします。
自分についている過失割合の分だけ慰謝料などの賠償金が減額されます。
これを過失相殺といいます。
過失相殺の計算は、ざっくり言えば以下のように行います。
慰謝料(損害額)×(100%-被害者の過失割合)=被害者が受け取る損害賠償金
たとえば、過失割合が被害者:加害者=20:80で、賠償金の合計額が100万円だった場合は100万円×(100%-20%)=80万円となり、被害者が受け取る金額は80万円となります(一般に保険会社が全額払ってくれることが多い治療費等も含めて過失に応じて減額され、差額は他の費目の賠償金から差し引かれます)。
過失割合は誰が決める?
損害賠償金に多大な影響を及ぼす交通事故の過失割合ですが、誰が決めているのかご存知でしょうか?
こちらでは、過失割合が決まる流れなどを説明していきます。
警察が過失割合を決めるわけではない
「交通事故における過失割合は警察が決める」と思っている人も少なくないですが、警察が過失割合を決めることはありません。
警察は、事故現場において実況見分を行い、実況見分の内容を実況見分調書という書類にまとめますが、直接的に過失割合の決定に関与することはありません。
また、事故における加害者と被害者の責任の所存について、警察から保険会社や事故の当事者に言及することはありません。
なぜなら、過失割合の決定は民事上の問題となるため、民事不介入の観点から警察は介入しないからです。
そのため、警察に味方をしてもらって過失割合について証言してもらうなどはできません(警察が作成した実況見分調書などの書類は取り寄せられます)。
過失割合は、保険会社との交渉で決まる
では、一体誰が過失割合を決めているのでしょうか?
基本的に過失割合は、加害者の保険会社と被害者との話し合いで決まります。
加害者側から提示される過失割合に対して、被害者側が内容を確認し、納得できなければ交渉をしていくことになります。
過失割合が決まる流れ
具体的な過失割合が定まるまでの流れについて以下にて説明していきます。
事故発生から過失割合決定までの流れ
過失割合は事故後早い段階から話し合われます
交通事故後、警察による実況見分まで終わると、事故の当事者双方が自動車保険に加入していれば、自分の保険会社と相手方の保険会社がやり取りをします。
そこで、事故の詳細や経緯・意見の食い違いなどを把握し、過失割合のすり合わせをしていきます。
その際に、当事者双方の話に大きな食い違いがあり、過失割合の目処が立たないような場合は専門の調査会社に依頼をして事故現場をリサーチしてもらうこともあります(調査会社は、主に保険会社からの依頼を受けて、事故当時の運転者の状況や道路状況などを調査する民間企業です)。
それらを経て、加害者側の保険会社が被害者側に対して基本割合を提示します。
提示された過失割合に納得できれば過失が決定し、納得できない時は交渉を行います。
過失割合を決める際の根拠
過失割合は、加害者が勝手に決めるわけでも、被害者の感情で割合を決めるわけでもありません。
過失割合は、過去の裁判例などをもとに定型的な要素で割り出される基本過失と、事故の個別の事情によって過失割合の修正を検討する修正要素によって定まります。
基本過失を算出した後に、修正要素を双方で話し合い基本過失に対して加算や減算がなされます。
この基本過失は、交差点での出会い頭の事故なのか、駐車場内における交通事故、路外から飛び出してきた車との衝突なのか、といった事故の場所や状況、また加害者と被害者が車同士なのか車と歩行者なのかといった当事者の関係をもとに判断していきます。
修正要素とは、そういった定型的な事故や当事者の状況以外の、ウィンカーを出していたか、走行速度はどうだったかなどの事情のことです。
どういった修正要素があるか、その修正要素が過失割合にどの程度の影響を与えるかはある程度類型化されています。
加害者の保険会社は相手目線で過失割合を提示する
過失割合の提示は、相手方の保険会社から出されるということをご説明しましたが、裁判例をもとに過失割合が導き出されるといっても、被害者の利益だけを考えて算出されるわけではありません。
加害者側の保険会社は、保険契約者である加害者から申告のあった事故状況をもとに過失割合を決定します。
そのため、加害者側の保険会社の提示する過失割合は、加害者にとって有利な内容(被害者に必要以上の過失がついている)になっている可能性があり、そのまま鵜呑みにして了承をしてしまうと、不当な過失割合で示談することになる可能性があります。
また、過失割合の判断には専門的な知識が必要で、被害者にとってはそれが正しいのか妥当なのかを判断することは難易度が高いでしょう。
具体的な過失割合の例はこちらでご確認ください。
過失割合の交渉は弁護士に相談
交通事故における過失割合は、警察が決めるわけではなく加害者と被害者の保険会社の話し合いによって決まります。
そして、最初に過失割合を提示してくるのは加害者側の保険会社になるため、その妥当性は慎重に見極める必要があります。
また、過失割合の修正を認めてもらうには根拠のある主張が必要になるため、専門的な知識を要する弁護士に対応を依頼することで納得のいく過失割合に近づける可能性が高まるでしょう。
過失割合に関するお悩みがある方は、弁護士に相談することをおすすめします。