幼稚園児、保育園児や小学生が被害者となる交通事故は日々発生しています。子どもが事故の被害者になってしまった保護者の方は、皆さん気が動転されてしまうものです。
本記事では、子どもが交通事故に遭ってしまった保護者の方に向けて、「子どもが交通事故に遭った場合の治療費の負担」、「受け取ることができる賠償金の種類」、「子ども側の過失割合」について解説します。
子どもが交通事故に遭った場合、治療費はどうなる?
子どもが交通事故でケガをした場合、ほとんどのケースで加害者が治療費を負担することになります。
一部例外もありますので、例外を含めてケガの治療費の取扱いについて解説します。
人身事故で子ども側の過失が小さい場合
「交差点で、子どもの自転車と一時停止を無視した自動車が接触した」。
「横断歩道を歩行中の子どもが自動車にはねられた」。
このような事故状況の場合、加害者となる自動車の運転手の過失が大きいため、子どもの治療費は加害者(保険会社)の負担となるのが通常です。
加害者が任意保険に加入している場合は、保険会社の担当者と示談交渉を行います。
加害者の保険会社が医療機関に「治療費の支払いは保険会社に直接請求するように」と指示をしてくれることもあり、この場合は被害者による窓口での治療費負担(一時的な立て替え)もありません。
人身事故で子ども側の過失割合が大きい事故の場合
「子どもが深夜に無灯火で自転車に乗り、赤信号を無視して青信号走行中の自動車と衝突した」。
相手方の過失割合が小さく、子どもの過失割合が大きくなる可能性がある事故形態では、相手方に治療費を請求できない可能性があります。
相手方が任意保険に加入していても、保険の契約者の過失割合が小さい場合、任意保険は対人賠償責任保険での対応を拒否することがあるのです。
このような場合で、保険で治療費を支払うには、「相手の自賠責保険に被害者請求をする」、「自分の人身傷害保険を使う」のいずれかの方法を選択することになります。
自賠責保険の被害者請求
自賠責保険の被害者請求とは、ケガをした側がケガをさせた側の自賠責保険に賠償金を請求する手続きです。
被害者請求をする場合、被害者が医療機関の窓口で治療費を一旦立て替えておく必要がありますが、被害者の過失割合が7割以上でなければ規定された限度額を上限に治療費は全額支払われます(自賠責保険における被害者とは、過失割合の大小を問わず、ケガをした側のことを指します)。
なお、この場合、健康保険を使用して治療をしたほうが、慰謝料、付添看護料などの手元に残る賠償金が増える可能性があります。
健康保険を使用するメリットや使用方法については下記の記事をご参照ください。
人身傷害保険を使う
同居のご家族が加入する人身傷害保険に、契約自動車の乗車中以外の自転車事故や歩行中の自動車との事故も対象としている特約が含まれる場合は、人身傷害保険の補償を受けることができます。
人身傷害保険は、被害者が治療費を窓口で負担しないように手配してくれることが多いです。
子どもが単独で起こした事故の場合
「子どもが自転車で走行中に、駐車場で駐車している自動車に衝突してケガをした」。
このような場合は、自動車側の過失を問うことは難しく、他者から治療費を支払ってもらうことはできません。
人身傷害保険の車外担保特約に加入していれば、そちらから治療費が支払われますが、加入していなければ自己負担となります。
子どもの交通事故で慰謝料請求できる賠償金の種類
子どもが自動車やバイクなどと接触をしてケガをしてしまった場合、自動車やバイクの運転手に慰謝料請求できます。請求できる代表的な費用は以下のとおりです。
- 治療費
- 通院交通費
- 付添看護費
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
治療費などの実費は医療機関や薬局に支払われますので、被害者となった子ども、保護者の手元に残るのは、付添看護料と慰謝料となり、後遺障害が認定された場合は後遺障害慰謝料と逸失利益も請求できます。
付添看護費
付添看護費とは、入通院に付き添いが必要だった場合に認められるお金です。
被害者が単独での通院が難しい場合には付添看護料が認められます。
入院の場合は病院で看護を受けていますが、事故被害者が小さな子どもの場合は、保護者の付添が求められます。
保護者による入通院の付添看護費用は、以下のとおりに基準額が決まっています。
ご家族が付き添えず、シッターサービスなどを利用して付い添いを依頼した場合には実費が支払われます。
自賠責基準 | 裁判基準 | |
---|---|---|
通院付添看護費 | 2,100円 | 3,300円 |
入院付添看護費 | 4,200円 | 6,500円 |
- 2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合、自賠責基準の付添看護費が異なります。
自賠責基準とは、自賠責保険で定められた支払い基準のことです。
交通事故の賠償基準の中では、もっとも低額な支払い基準ですが、被害者が保険会社と交渉する際はこの基準が適用されます。
裁判基準とは、裁判になった際に認められる基準で、弁護士に示談交渉を依頼すると、裁判基準の付添看護費が認められやすくなります。
また、保護者が付き添いのために仕事を休み、収入が減少した場合には減少した収入分も請求可能です。
ただし、減少した収入が、シッターサービスなどに依頼した場合よりも高額になるケースでは、専門家に依頼した場合の相場が上限とされる可能性もあります。
入通院慰謝料
慰謝料とは、事故でケガをした際の精神的苦痛を償うためのお金で、被害者の年齢や職業、収入などに関係なく支払われます。
子どもの場合であっても大人と同様の算定基準で算定されます。
入通院慰謝料は、治療期間や通院日数に応じて決まり、「骨折をして1度しか通院をしないまま完治した被害者」と、「むちうちで半年間通院を続けた被害者」では、後者のほうが慰謝料の金額は高額になることが多いです。
つまり、適切な慰謝料を受け取るなら、医師の指示に従い、継続的な通院を行うことが大切になってきます。
また、慰謝料は金額の交渉も必要です。
相手方が任意保険に加入している場合、通常は保険会社から慰謝料の金額が提示されますが、その金額は相場以下のケースがほとんどです。
示談交渉によって増額できる可能性があり、弁護士に交渉を依頼するだけで慰謝料が増額する可能性が高いので、弁護士への依頼を検討しましょう。
入通院慰謝料の計算や金額について詳しくは、下記でご説明しています。
当サイトおすすめの法律事務所
弁護士法人ステラに相談
後遺障害慰謝料
適切な治療を受けたにも関わらずケガが完治せず、将来の労働能力が低下するような後遺症が生じて後遺障害等級の認定を受けた場合は、後遺障害慰謝料を請求可能です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって金額が異なり、年齢が金額に影響することは基本的にはありません。
後遺障害慰謝料の金額について詳しくは、下記でご説明しています。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害が生じなければ将来受け取れたはずの利益のことをいいます。
足に後遺障害が残り歩行が困難になった場合、将来就くことができる職業が制限されてしまい、収入の低下が予想されます。
この将来の収入の減少を補償するのが逸失利益です。
ほとんどの子どもは、事故当時は収入を得ていませんので、通常は、高校を卒業する18歳から67歳までの期間で逸失利益を算定します(子どもが大学生の場合は22歳から)。
逸失利益の計算方法については、下記の記事をご確認ください。
子どもが交通事故の当事者になった場合の過失割合
子どもが自転車に乗っていた際に起きた人身事故では、子どもと相手方それぞれに落ち度があるケースも少なくありません。
また、子どもが歩行者の場合でも、信号無視などの大きな落ち度があった場合には、子どもにも責任があると判断されます。
このような事故では、子どもにも事故の過失があるとされ、過失割合に応じて受け取る慰謝料が減額されます(これを過失相殺といいます)。
子どもであっても過失は生じる
歩行者と自動車の事故であれば、過失割合は歩行者が圧倒的に有利になるものの、歩行者に重大な落ち度がある場合には、歩行者にも一定の過失が生じます。
たとえば、歩行者が信号無視をしていた場合や、横断歩道がないところを横断した場合などです。
子どもが自転車に乗っていて、突然道路を横断した、家から飛び出したなどの場合は自転車に乗っていた子どもにも一定の過失割合が生じると考えられます。
何割の過失がつくかは、事故の詳細で変わりますので弁護士にお問い合わせください。
歩行者と自動車の事故の過失割合の一例は下記でご説明しています。
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なお、歩行者が子どもの場合は、成人の場合と比較すると過失が5%から10%ほど軽くなる可能性がありますが、子どもだからといって責任がゼロになる訳ではありません。
相手の自動車などに損傷がある場合は保護者が賠償
自転車に乗っていた子どもが、自動車やバイクと接触して自動車やバイクに損傷が生じた場合、過失割合に応じて子どもの親権者、保護者が賠償をすることになります。
責任能力のない子どもには賠償責任は生じませんが、子どもの代わりに親権者、保護者の管理監督責任が問われます。
たとえば、子どもの過失割合が10%で、自動車の修理代が20万円だった場合、2万円の修理費を支払わなければなりません。
子どもの自転車も損壊していて、その修理代が1万円であれば、相手に請求できる修理代は9,000円(過失10%の分だけ減額)ですので、差し引き12,000円の修理費を相手に支払うことになります。
過失割合に応じて慰謝料が減額されることもある
子ども側にも過失がつくケースでは、示談交渉などで決定した慰謝料から過失割合の分だけ減額されます。
子どもの過失割合が10%で、慰謝料の合計金額が200万円だった場合、受け取り金額は180万円となります。
治療費や慰謝料が自賠責保険の範囲(傷害の場合は上限120万円)で収まれば減額されることはほとんどありませんが、限度額を越え、相手の任意保険からも支払いを受けている場合は、過失相殺によって減額されます。
子どもの交通事故は弁護士に相談を!
子どもが交通事故の被害に遭うと、保護者、親権者は子どものケアや通院等に追われて日常生活もままならない状態になるかと思います。その中で、保険会社や加害者と示談交渉に臨むのは困難なことです。
弁護士に交渉を一任することで、子どもの治療に専念できますし、適切な慰謝料の請求もできます。
子どもが交通事故に遭った場合は、家族だけで対応をしようとせずに弁護士へのご相談をおすすめします。