高齢者の交通事故の話題を目にすることが多くなりました。ニュースでは高齢者が加害者の事故が取り上げられることが多いですが、事故被害にあわれている方も大勢いらっしゃいます。高齢のご両親が事故被害に遭い、代わりに手続きを対応しているご家族の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、高齢者の交通事故での慰謝料請求や後遺障害の等級認定などのポイントをご説明します。
高齢者の休業損害や逸失利益。請求は可能?
高齢者が交通事故では、示談交渉で休業損害や逸失利益が争点になるケースが多いです。
休業損害は、ケガで仕事を休んで収入が減った場合などに支払われる補償、逸失利益は、後遺障害が残って今後の仕事の収入に影響する場合などに支払われる補償ですが、相手保険会社は、事故被害者が高齢であることを理由に、休業損害と逸失利益の支払いを認めない可能性があります。
たしかに、年金のみで収入がない方、不動産収入など事故があっても影響がない収入のみの方は、休業損害や逸失利益が支払われないこともあります。
しかし、年齢に関わらず自営業、パートなどで働いていて収入があれば、交通事故によるケガで収入が減ったり、後遺症が残って仕事を辞めたりしたら、休業損害や逸失利益が支払われるべきです。
また、実際に働いていなかったとしても働く意思・見込みがある場合なら認められることもあります。
主婦の方が交通事故にあい、家事に影響が出た場合にも休業損害・逸失利益は認められます。
保険会社が、年齢を理由に休業損害や逸失利益の支払いを認めない場合は、示談交渉することが大切です。
自分だけでは難しいときは、弁護士に相談して進めましょう。
休業損害や逸失利益が認められることで、賠償金の総額が数十万〜数百万円変わる可能性があります。
逸失利益は67歳以上でも請求できる?
すでにいろいろと調べている方は、逸失利益が支払われる期間(労働能力喪失期間)は、基本的には「67歳−症状固定時の年齢」で決めることをご存知かもしれません。
事故被害者が高齢者だと、症状固定時の年齢が67歳以上のこともあります。
この場合でも、逸失利益は請求できますのでご安心ください。
67歳以上の場合、厚生労働省が発表している平均余命というデータを使用し、「平均余命×1/2」を労働能力喪失期間として請求することができます。
家族の看護費や住宅の改造費は請求できる?
高齢者の方が交通事故にあうと、家族の看護が必要となるケースは多いです。
入院や通院の付き添いのほか、自宅での身の回りのお世話などで家族のサポートが必要となります。
この場合、付き添いの日数に応じて付添看護費を請求することが可能です。
ご家族が付き添いできず、ヘルパーさんなどに依頼をした場合は、ヘルパーさんにかかった費用を請求できる可能性があります。
また、後遺障害が残って足が不自由になり、廊下やお風呂場に手すりをつけた場合、その費用を家屋改造費として請求することもできます。
過去のケガが慰謝料や後遺障害等級に影響することがある
高齢の方の場合、大きなケガや手術の経験がある場合も多いでしょう。
交通事故以外のケガで後遺症が残っている人もいるかもしれません。
このような過去の治療歴や症状のことを既往症(きおうしょう)と言い、既往症があると慰謝料が減額されたり、後遺障害等級の認定結果に影響したりする可能性があります。
主な影響は次の2つです。
聞き慣れない言葉ですが、高齢者の交通事故では出てくる機会も多いです。
素因減額(そいんげんがく)
既往症があったり、高齢で体が弱くなっていたりする場合に、通常よりも慰謝料が減る素因減額という考えがあります。
たとえば、高齢の方が自動車と接触して転倒し、骨折したとします。
この際に保険会社が「高齢のため、若い人に比べて骨が弱っていたこともあり骨折をした」として、素因減額による慰謝料の減額を主張してくるというものです。
なお、裁判例では歳相応といえる程度ならば、たとえ既往症や体が悪くなっていても素因減額の主張を認めなかった事例も多くあります。
既往症があれば必ず減額されるというわけではありません。
加重障害(かじゅうしょうがい)
加重障害とは、後遺障害等級が認定されるような既往症が事故以前からあった場合を言います。
たとえば、以前から腰に痛みがあった人は、交通事故で腰痛の後遺症が残ったとしても、直重障害を理由に後遺障害等級が認定されないことがあります。
また、加重障害によって後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が低くなることもあります。
たとえば、膝の動く範囲が制限されていた人が、事故によって可動範囲がさらに狭くなった場合、後遺障害等級は認定されますが、加重障害を理由に後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が低くなる可能性があります。
高齢者は過失割合が低くなりやすい
過失割合には、児童や高齢者は判断能力や行動能力が低くなるため、歩行または自転車で交通事故にあった場合、通常よりも5%〜10%程度、過失が低くなるという考えがあります。
ここでの高齢者はおおむね65歳以上の人をさしています。
過失割合が5%〜10%異なると、賠償金の合計額は数万円から数十万円程度変わることもあり、とても大きな違いとなり得ます。
示談交渉で相手保険会社が過失割合を提示してきた際に、高齢者であることが考慮されていなかったら、反論することで過失割合の変更が認められるかもしれません。
弁護士に相談することで家族の負担も軽減
高齢者の方が交通事故にあうと、ご本人の生活はもちろん、周りのご家族にも大きく影響するケースが少なくありません。
ご家族の負担が大きくなりすぎないよう、ぜひ弁護士のサポートを頼りにしてください。
弁護士に依頼すると、保険会社との示談交渉などは弁護士が行いますので、ご家族の負担が軽減されますし、ご自身で交渉する場合と比べて、慰謝料の増額も期待できます。
交通事故によって環境が変わると、お金が必要な場面も増えますので、適切な金額の慰謝料を受け取り、今後の生活への不安をすこしでも軽くしましょう。