駐車場事故の過失割合【事故状況別7例】。10対0は認めてもらえない?

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駐車場での交通事故の過失割合【事故状況別】10対0が認められづらい理由

駐車場は交通事故が発生しやすい場所のひとつ。隣に駐車している自動車にぶつけてしまう物損事故や、通路内での自動車同士の衝突事故、自動車と歩行者の事故などが発生します。このような駐車場内での事故では被害者にも過失がつくケースが多く、過失割合が10対0でないことに納得できずにいる方も多いです。
ここでは、駐車場内での交通事故の過失割合や慰謝料、さらには警察に交通事故として扱ってもらえないケースについてご説明しています。(過失割合は個別事案によって変わる可能性がありますので、詳しくは弁護士へのご相談をおすすめします。)

駐車場事故は被害者にも過失がつきやすく10対0は難しい

駐車場での人身事故の過失割合は、公道で発生した人身事故で過失割合を決める際と判断基準がやや異なります。
駐車場内では、車道では想定されないような自動車、歩行者の動きがあり、自動車も歩行者もお互いに周りの動きをしっかり確認する注意義務があると考えられているからで、公道での事故に比べて自動車、歩行者にかかわらず被害者にも過失がつきやすくなっています。
そのため、駐車場内で起きた事故で過失割合が10対0になるケースは少ないです。被害者の方が「自分には落ち度はない」と感じていたとしても、10%や20%の過失がついてしまうことは多いでしょう。
なお、加害者側に明らかな過失がある場合は、10対0が認められる可能性もあります。

駐車場内通路での事故の過失割合

駐車場内での事故の過失割合を、状況別にご説明していきます。

駐車場内の十字路にて衝突した場合での事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
駐車場内の十字路での衝突事故 50:50

まずは、駐車場の通路を走行していた自動車同士による衝突事故の過失割合です。
駐車場内の十字路で出会い頭に衝突した場合、進行方向に関係なく50対50が基本的な過失割合となります。
事故の場所が公道の交差点であれば、右左折者よりも直進車優先で直進車の過失が小さくなる傾向にありますが、駐車場内の場合はそれが当てはまりません。

駐車場内にて十字路での衝突事故(道幅に明らかな差がある場合)と、T字路での右左折車と直進車の衝突事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
駐車場内の十字路での衝突事故(道幅に明らかな差がある場合) 狭い通路60:広い通路40
駐車場内のT字路での右左折車と直進車の衝突事故 右左折車60:直進車40

一方で、駐車場内の通路でも道幅に差があるときは、幅が広い通路が優先され、T字路の場合は、直進車が優先されます。
なお、一時停止を守っていなかった、明らかな前方不注意があったなどの事情がある時は、そのような行為をしたドライバーの過失が10〜20%程度大きくなります。

駐車スペースに出し入れする際の交通事故の過失割合

駐車スペースから出る自動車と通路を走行中の自動車との衝突事故と、駐車スペースに止めようとする自動車と通路を走行中の自動車との衝突事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
駐車スペースから出る自動車と通路を走行中の自動車の衝突事故 駐車スペース側70:通路側30
駐車スペースに止めようとする自動車と通路を走行中の自動車の衝突事故 駐車スペース側20:通路側80

次は、駐車スペースに出し入れする自動車とでの事故の過失割合です。
駐車スペースから出ようとしている自動車と通路を走行中の自動車が衝突した場合、過失割合は駐車スペース側70:通路側30となり、出ようとしていた自動車が多くの責任を負います。
反対に、駐車しようとしている自動車と走行中の自動車の事故の場合は、駐車スペース側20:通路側80となり、通路側の自動車の過失が大きくなります。

駐車スペースの自動車が前進していたか、バックしていたかに関係なく、この過失割合が基本割合となります。
ただし駐車スペースから出た直後に追突されたなど、車体が駐車スペースから完全に出ていた場合は、通路で起こった事故として異なる過失割合が適用される可能性があります。
また、自動車が駐車スペースに一度入ったものの、車体が枠に寄り過ぎてしまったため切り返していた際に衝突事故が発生した場合は、駐車中の事故ではなく、車を出す際の事故と判断されて被害者と加害者の立場が逆転することがあります。

駐車場内での歩行者と自動車の交通事故の過失割合

駐車場内にて通路での歩行者と自動車の衝突事故と、駐車スペースでの歩行者と自動車の衝突事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
通路での歩行者と自動車の衝突事故 歩行者10:自動車90
駐車スペースでの歩行者と自動車の衝突事故 歩行者10:自動車90

駐車場内での歩行者と自動車の事故では、歩行者10対自動車90が基本割合となります。
公道での交通事故だと、歩行者に事故の責任がなく過失割合が自動車100対歩行者0となるケースも多いですが、駐車場内では「歩行者も自動車が来ないか、より注意して移動するべき」と考えられているため、歩行者にも10%程度の過失がつくことが多いです。
歩行者が急に通路に飛び出して事故が発生したなど、歩行者側に事故の原因があると、歩行者の過失がさらに10%程度重くなります。
また、歩行者が児童や高齢者の場合は5%、幼児や身体障害者の場合は10%程度、歩行者の過失が軽くなります。

駐車場内での交通事故は「交通事故証明書」が発行されない?

駐車場での事故は、警察に連絡をしても交通事故として処理してもらえないことがあります。
駐車場は私道や私有地に作られていることも多々ありますが、実は私道や私有地は道路交通法の適用外です。
そのため私道や私有地で事故が起こっても警察が対応できないことがあるのです。
道路交通法が適用されないと、物損事故、人身事故ともに警察で交通事故として処理してもらえず、交通事故証明書も発行されない可能性があります。
ただし、私道や私有地にある駐車場のすべてが道路交通法の適用外というわけではなく、実際には駐車場のタイプによって判断されます。
自宅の駐車場や月極駐車場など、利用者が限られる駐車場は道路交通法が適用されない可能性が高く、コインパーキングや商業施設など、不特定多数の人が利用する駐車場は、道路交通法が適用される傾向があります。

慰謝料請求にはどう影響する?

道路交通法の適用有無による慰謝料請求への影響

道路交通法が適用されるかどうかで、慰謝料請求の対応も変わります。
交通事故として処理されて交通事故証明書が発行される場合は、普通の交通事故と同じように慰謝料を請求できます。
しかし、道路交通法が適用されなかった場合、慰謝料請求をスムーズに行えない恐れがあります。
道路交通法が適用されないケースでは、相手の保険を使えるかがポイントとなります。
相手の保険が自賠責保険だった場合、自賠責保険は公道で起こった事故を補償する保険のため、自賠責保険は使えない可能性が高いです。
相手が任意保険に加入していれば、任意保険に慰謝料請求することはできますが、私有地等での事故で慰謝料が支払われるかは、任意保険の契約内容次第となります。
また、警察で交通事故証明書を発行できないときは、相手の任意保険に慰謝料請求をする前に「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を用意する必要があります。
交通事故として扱ってもらえず、慰謝料請求や治療費の支払いでトラブルを抱えている方は、早く専門家に相談することをおすすめします。

駐車場での交通事故のお困りごとは弁護士に相談

交通事故が発生した際、過失割合で受け取る慰謝料の金額が変わります。
駐車場では、被害者にも事故を避けようとする注意義務が求められるため、運転中、歩行中にかかわらず過失割合10対0は認められづらいです。
ただし、相手が提示してきている過失割合が正しいとは限りません。自分に必要以上の過失がついていたり、相手に明らかな過失があるのなら、そのままにしないほうが良いです。
また、駐車場での自動車同士の事故は過失割合の差が小さいため、相手の保険会社に不注意を指摘され、自分が加害者にされてしまうこともあり、これもそのままで示談を進めるべきではありません。
保険会社の主張に納得できない時は、弁護士に相談し、正しい過失割合を認めてもらうように示談交渉をしましょう。