事故発生時に助手席や後部座席に家族や知人が乗っているケースは多いです。交通事故によって同乗者がケガをした場合、同乗者も慰謝料請求が可能で、事故の責任が誰にあるかによって請求できる相手が変わります。
また、事故が発生した原因が同情者にもある場合は、過失がつくこともあります。
ここでは、同乗者の慰謝料請求や運転者と一緒に弁護士に相談するメリットなどを紹介していきます。
交通事故の同乗者が慰謝料を請求する相手は?
車の助手席や後部座席に乗っている最中の交通事故でケガをした場合、運転者が事故でケガをした場合と同じように治療費や慰謝料を請求することが可能です。
しかし、その際にポイントになってくるのが請求をする相手で、同乗者のケガに対する慰謝料などの請求先は交通事故を起こした責任がある人です。
事故の相手方に必ず責任があるとは限らず、事故の責任が誰にあるかで、慰謝料請求の相手が次のように変わります。
交通事故の責任 | 慰謝料を請求できる相手 |
---|---|
事故の相手方だけに過失がある | 交通事故の相手方に請求できます。 |
事故の相手と運転者の両方に過失がある | 相手方と運転手の両方に請求できます。 |
運転者だけに過失がある | 運転者に請求できます。 |
同乗していた車の運転者にだけ過失がある場合は、同乗者は事故の相手方に慰謝料を請求できません。
このケースでは、事故の相手方は同乗者と同じ事故の被害者であり、同乗していた自動車の運転者が事故の加害者だからです。
たとえば、友人が運転する車に乗っている際に友人が事故を起こしてケガをしたら、慰謝料などは友人(友人が加入する保険会社)に請求することになります。
ただし、このように同乗者は運転者に対して慰謝料請求を行うケースでは、運転者と同乗者が家族だと、任意保険での慰謝料請求はできないことが多いです(対人賠償責任保険で、親子や配偶者は保険適用の対象外となっているため)。
また、事故の責任が同乗している車の運転手と事故相手の両方にある場合、事故を起こした両者に慰謝料請求できます。
これは、「2人に対して慰謝料請求できて慰謝料の金額が増える」というわけではなく、慰謝料請求を行う相手を選べるということです。
なお、同乗者が事故の相手方に慰謝料を請求した場合、支払われた慰謝料について、相手方から運転者に対し過失割合に応じて請求されます。
同乗者に過失がつくことはある?
同乗者に対して、交通事故の過失がつくことはあるのでしょうか?
そもそも、交通事故においては、発生した交通事故に対する加害者と被害者との責任の割合を過失割合として表します。
被害者側の同乗者には、基本的には過失はつきませんが、以下のような事故の原因となり得る行為があると、同乗者にも過失がつく可能性があります。
故意に危険な運転をしているのを把握していても止めなかった
極端なケースですが、車の運転者が飲酒運転であることや無免許であることを知りながら車に同乗をしていた、もしくは運転を辞めさせなかったケースでは、同乗者に対しても故意に危険な運転をしていることを止めなかったとして過失がつくことがあります。
運転者の正常な運転を妨害する行為を行ったケース
運転者が故意に危険な運転をしているのに止めないケースや、危険な運転行為を煽るようなケースも、同乗者に過失がつくことがあります。
助手席にいた同乗者が運転者のハンドル操作を邪魔したことで、交通事故が起きたケースなどが該当します。
また、運転者が体調不良であるのに無理に運転をさせるなども過失を問われるケースがあります。
いずれのケースにおいても、交通事故の原因は同乗者側にもあるという判断ができる場合には、直接運転していない同乗者であっても事故の責任があるとされ、過失がつく場合があるでしょう。
好意同乗減額がされることも
近年は家族や知人の車に同乗していただけで適用されることは滅多にありませんが、同乗者の交通事故被害には好意同乗減額というものがあります。
好意同乗減額とは、車の運転者の好意によって無償で同乗させてもらっていたときに交通事故に遭いケガを負うと、被害者が請求できる賠償金が減額されることをさします。
同乗者側は運転者の好意に甘えて無償で同乗をしていたので、その際に発生した損害について責任を負うのが公平だという考え方で、慰謝料など賠償金の合計額から20%~50%が減額されます。
相手の保険会社が好意同乗減額を主張してくる可能性もありますので、同乗者の慰謝料請求では把握しておく必要があります。
裁判上は単に同乗者というだけでなく、同乗者が危険を増加させたり、危険であることを承知の上で同乗していた場合に、好意同乗減額となる傾向にあります。
同乗者が使用できる運転手の保険
交通事故の同乗は、運転者が加入する保険から、慰謝料とは別で保険金が支払われる可能性があります。
また、運転者が加入する保険のサービスを利用できることもあります。
同乗者が使用できる運転手の保険について確認をしていきます。
人身傷害保険
人身傷害保険とは、補償の対象となる車両に乗車している際に交通事故にあい、補償対象者が死傷した場合に使用できる保険です。
過失の有無に関係なく、事故によるケガの治療費や休業損害、慰謝料などが補償されます。
契約時に定めた保険金額の範囲内で実際の損害額が支払われます。
なお、人身傷害保険では、相手方から賠償金が支払われた場合には、支払いを受けた金額が差し引かれます。
- 補償対象者
運転者(保険契約者)、配偶者、同居の親族、別居の未婚の子など
搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険とは、補償の対象となる車両に乗車をしていた方を対象とした保険です。
搭乗者傷害保険つきの保険に契約している車両に乗車している際に交通事故にあった場合、ケガの治療費などが補償されます。
保険金額はあらかじめ定められており、実際の治療費に関係なく、原則定額の保険金が支払われます。
定額であるため、実損害分が補償される人身傷害保険に比べると金額は少ないですが、搭乗者傷害保険はケガの治療中でも迅速に保険金を受け取れるメリットがあります。
- 補償対象者
保険契約の車両に乗車中の方
弁護士費用特約
自動車保険に弁護士費用特約がついている場合があります。
弁護士費用特約とは、交通事故などで相手方に慰謝料請求をするために弁護士に相談・依頼をした場合の弁護士費用を補償する自動車保険の特約です。
弁護士費用特約の補償対象は、運転者本人だけでなく、契約内容によって運転者の配偶者・同居の親族・別居の未婚の子・自動車の所有者、交通事故にあった車両に搭乗中の同乗者まで、幅広い方が対象となっています。
運転者が弁護士費用特約に加入していて同乗者も利用できる場合は、同乗者自身が弁護士費用特約に未加入でも、運転者の弁護士費用特約を使って弁護士に相談・依頼できる可能性があります。
同乗者も弁護士費用特約の対象となる場合は、対象となる人の欄に、「契約中の自動車に搭乗中の人」という記載がありますので確認をしてみましょう。
弁護士費用特約の使用について詳しくは下記をご確認ください。
運転者と同乗者は同じ弁護士に相談がおすすめ
運転者と同乗者がケガを負ってしまい弁護士に相談したい場合、同じ弁護士に相談をすることをおすすめします。
その理由を、運転者と同乗者が家族の場合と、家族ではない場合に分けて解説していきます。
運転者と同乗者が家族のケース
交通事故被害にあった際、ケガをした運転者と同乗者が家族であったというケースは多くあるでしょう。
家族の場合であれば、家族分をまとめて弁護士に対応をしてもらうことで、複数の弁護士とやり取りしなくて良いという物理的なメリットはもちろん、状況説明を何度も行ったり資料収集を何度も行ったりする必要もなく、手間を省くことができます。
また、対応の負担軽減だけではなく、経済的なメリットも見込めるようになるため、同乗者が家族の場合には、バラバラに依頼するのではなく、まとめて弁護士に依頼するようにしましょう。
運転者と同乗者が知人のケース
同乗しているのが友人知人というケースもあるでしょう。
このようなケースでも、同じ弁護士に相談や依頼をすることができます(運転者に過失がないことが明らかな場合に限る)。
知人や友人も依頼する場合は、運転者がまとめて弁護士とやりとりをするわけではなく、一人ずつ、弁護士へ依頼をする必要があります。
それでも、同じ弁護士に依頼することで情報の不足などを防ぎ、同乗者が適切な賠償金を受け取ることに繋がります。
交通事故の慰謝料は弁護士に相談
同乗者の方も交通事故でケガを負えば、慰謝料を受け取ることはできます。
その際は「誰に請求できるのか」、「同乗者にも過失がつくか」を確認しながら対応を進めていきましょう。
交通事故の慰謝料請求について少しでも悩むことがあれば、弁護士へのご相談をおすすめします。