「妊娠中に交通事故に遭ったら、おなかの赤ちゃんへの影響はどうなってしまうのか?」、「妊婦の交通事故は、妊娠していない人と慰謝料の金額に差はあるのだろうか?」など、妊娠中に交通事故に遭ってしまったら、不安でいっぱいになってしまうのではないでしょうか。
こちらの記事では、妊娠中に交通事故に遭ってしまった場合の対応のポイントや慰謝料の請求について解説をしていきます。
妊婦が交通事故にあった時に取るべき対応
もしも妊娠中に交通事故に遭ってしまったら、被害者は何をすべきでしょうか?
こちらでは、事故にあった時の対応の順序を説明していきます。
すぐに病院に行き医師の診察を受ける
交通事故被害に遭ったら、できるだけ早く病院へ行き、医師の診察を受けましょう。
明らかに痛みがある場合はすぐに救急車を呼んでください。
救急隊員や医師に、交通事故に遭ったことと妊娠中であることを必ず伝えましょう。
救急車を呼ばなかったとしても、母体、子どものどちらの状態も診てもらってください。
速やかに病院へ行き、医師に診断してもらいケガの状態を判断してもらいましょう。
軽い事故の場合などで、「このくらいなら平気だろう」と通院を怠ってしまうケースもありますが大変危険です。
交通事故直後は、精神的にも興奮状態になっていて痛みに気づかないことや、事故後数日経ってから痛みが出てくることも多くあります。
また、妊娠中であれば自分自身の身体は平気でも、お腹の中の赤ちゃんがダメージを負ってしまっている可能性も否定できません。
妊婦さんが交通事故にあったら、ご自身のケガは整形外科、赤ちゃんへの影響は産婦人科で診てもらうようにしましょう。
警察へ連絡する、事故相手と連絡先交換をする
交通事故に遭ったらまず安全な場所に移動し、警察が到着するまでそこで待ちましょう。
その時間で加害者と連絡先等など下記の情報交換をしましょう。
- 相手方の氏名・住所・連絡先
- 勤務先名や住所・連絡先
- 相手方の保険会社や契約番号
そして警察が到着したら、警察にも妊娠中である旨を伝えてください。
事故後すぐに警察の実況見分が行われる場合は、指示にしたがって対応し、事故が発生した状況を伝えましょう。
事故相手や保険会社に自分が妊娠中であることを伝えておくと、その後の産婦人科における検診や治療費などの費用請求の際のトラブルを防止できるでしょう。
また、ケガをしているのであれば、交通事故の届け出をする際は人身事故で提出しましょう。
物損事故で処理をしてしまうと示談交渉において余計なトラブルが発生する可能性もあるため、ケガをしている場合、ケガが疑われる場合には人身事故として届出をしたほうが良いでしょう。
妊娠中の慰謝料請求でのポイント
妊娠中に交通事故に遭った際の慰謝料請求ではいくつかポイントがあります。
ひとつずつ説明していきましょう。
妊婦の交通事故での示談交渉は出産後に行う!
妊娠中の交通事故の場合、お腹の中の赤ちゃんへの影響が本当にないかどうかは、実際に生まれてくるまでは分かりません。
そのため、妊娠中の交通事故では、出産が済むまで示談をしないでおくことがポイントです。
相手方の保険会社に、「妊婦なので出産後に示談をしたい」と伝えましょう。
赤ちゃんへの影響がないことを確認するために定期的な検診も欠かさないでください。
保険会社から示談を急かされたら、保険会社のお客様相談窓口へ相談したり、保険会社宛に文書で示談に応じられない旨を伝えたりする手もあります。
また、第三者機関である「そんぽADRセンター」でも自動車保険に関する苦情を受け付けているので、埒が明かない場合には問い合わせをしてもよいでしょう。
弁護士への依頼を考えている人は、この段階で弁護士に相談し、弁護士から出産後の示談交渉を伝えてもらうのもひとつの方法です。
慰謝料請求の時効に注意!
出産後に示談交渉を行う場合は、損害賠償請求の時効に注意しましょう。
交通事故での慰謝料請求権の時効期間は5年と定められています(交通事故の翌日や、症状固定の翌日からカウント)。
万が一、お腹の赤ちゃんに影響があることがわかったケースでは、子どもが生まれた日や子どもに症状があると診断された日から時効をカウントすることが多いです。
妊婦さん自身の慰謝料請求と赤ちゃんへの影響での慰謝料請求で、時効期間の開始時期が異なることがありますのでご注意ください。
妊娠中の交通事故で請求できる慰謝料など
交通事故被害に遭った際に、請求できる補償には下記の項目などがあります。
賠償項目 | 詳細 |
---|---|
治療費 | 整形外科や産婦人科での治療費。 |
通院交通費 | 交通事故後によるケガで整形外科や産婦人科へ通院した際にかかった交通費。 |
休業損害 | 交通事故のケガによる治療のために仕事を休んだ日の収入に対する補償。産休中でも請求可能。 |
入通院慰謝料 | 交通事故によるケガで受けた精神的苦痛(ストレスなど)に対して支払われる補償。 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことで受ける精神的苦痛に対して支払われる補償。 |
逸失利益 | 後遺障害が残ったことによる、将来の収入に対する補償。 |
この他にも、付き添い介護費や入院雑費などを請求できることもあります。
これらの補償は、ケガの状態などによって、どの項目をいくら請求できるのか変わってきます。
特に妊娠中の方の事故の場合、産休中の休業損害の支払いや、通院交通費としてタクシー代が認められるかがポイントになるケースも多いです。
交通事故で支払われる補償について詳しくは、下記でご説明しています。
早産・流産・胎児に影響があった場合
妊娠中に交通事故に遭い、赤ちゃんに悪影響が出てしまった場合の補償について説明をしていきます。
交通事故が原因で流産した場合
妊娠中の交通事故が原因で流産してしまった場合には、事故に遭った妊婦自身のケガに対する慰謝料とは別で、流産したことについての慰謝料も支払われる可能性があります。
慰謝料の金額は、下記条件を総合的に考慮して判断されます。
- 臨月が近いか
- 初産か
- 今後の出産可能性(妊婦の年齢や妊娠に至った個別事情など)
妊娠中の交通事故で流産してしまった際は、個別の事情も加味しながら判断していくことになります。
判断が複雑になるため、保険会社側も妥当な慰謝料の金額を提示できない可能性があり、流産が加味されなかったり、低い金額の慰謝料しか提示されないこともあり得ます。
そのため、保険会社の提示内容ですぐに示談せず、交渉を重ねていくことが大切です。
交通事故が原因で切迫早産した場合
妊娠中の交通事故では、事故による衝撃が原因で切迫早産になってしまうケースもあります。
交通事故と切迫早産との因果関係が認められれば、切迫早産のためにかかった治療費・入院費を相手方に請求することが可能です。
交通事故が原因で、赤ちゃんに後遺障害が発生した場合
妊娠中に遭った交通事故が原因で、その後に生まれてきた赤ちゃんに後遺障害がある場合には、その症状についての治療費・慰謝料・逸失利益を相手方へ請求していくことができます。
ポイントは、生まれた赤ちゃんの症状や後遺障害と、交通事故に因果関係があることを証明できるかです。
この因果関係をめぐって、相手方保険会社と争いになることも少なくありません。
万が一、生まれた子どもの様子がおかしいと感じた際には、すぐに医師に相談しましょう。
子どもに対する損害賠償請求に保険会社が応じないなど、主張の食い違いに困ったら弁護士へのご相談をおすすめします。
妊娠中の交通事故で弁護士に依頼するメリット
妊婦さんが交通事故に遭った場合に、弁護士に依頼して事件解決を進めるメリットは数多くあります。
- 慰謝料の増額が期待できる
- 適切なアドバイスが受けられる
- 保険会社との対応のストレスを緩和できる
- 産前産後の示談交渉の負担を軽減できる
こちらでは、弁護士に依頼するメリットを具体的に紹介していきます。
慰謝料増額が期待できる
交通事故被害を弁護士に相談すると、慰謝料増額を期待することができます。
加害者側の任意保険会社が提示してくる慰謝料の金額は、任意保険基準と呼ばれる任意保険会社各社が独自で定めた基準にしたがって慰謝料を計算していて、慰謝料相場の半分前後の金額しか提示をしてこないことが多いからです。
しかし、弁護士に示談交渉を依頼すれば、裁判基準(過去の判例をもとにした相場)での慰謝料支払いを主張してもらえ、慰謝料の増額が期待できます。
適切なアドバイスが受けられる
加害者側の任意保険会社から適切な慰謝料を受け取るためには、保険会社に減額の口実にされないように定期的な医師の診察を受けるなど、慎重な行動を取る必要があります。
自分自身で保険会社と対応したら、自分の行動が正しいのかどうか不安になることもあるでしょう。
弁護士に示談交渉を依頼すると、その時々で、どのような対応をすべきかアドバイスを受けられます。
妊婦自身に後遺障害が残ってしまったら後遺障害の等級を認定してもらうための申請のサポートも受けられます。
また、赤ちゃんに何らかの影響がある場合に備え、事故との因果関係の立証のための資料集めの手助けも受けられます。
仮に万が一赤ちゃんに影響が出てしまった場合は、関係各所に事情を説明するための陳述書の作成の手助けなども受けられます。
保険会社対応のストレスを緩和
交通事故の被害に遭い、慰謝料について保険会社と示談交渉を進めていくのは、妊娠中の被害者の方にとってかなりのストレスになります。
また、通院中であるにも関わらず、「ケガがまだ治らないのか」といったヒアリングの連絡が頻繁に来るなど、保険会社の対応の悪さについてご相談が入ることも多くあります。
ただでさえ、産前産後のデリケートな時期に余計なストレスを抱えるのは精神的にも辛いでしょう。
弁護士が間に入って示談交渉のサポートをすれば、被害者本人が保険会社と直接話をして進めていく必要は無くなります。
弁護士と相手方保険会社とで話を進めてくれるため、直接やりとりをする対応のストレスを緩和できるという大きなメリットがあるでしょう。
産後の示談交渉を自分でするのは大きな負担
妊娠中に交通事故に遭った場合、子どもの出産を待って示談をしたほうがよいということは先ほどご説明しました。
ただし、産後は育児に追われている大変な時期ですので、つきっきりで育児をしている最中に交通事故の示談交渉をするのは大きな負担です。
弁護士に相手方保険会社との示談交渉を依頼すれば、交通事故に関することは弁護士にすべて任せることができ、ケガの治療や産後の育児にきちんと専念できるメリットがあります。
交通事故の示談交渉は弁護士に相談
妊娠中に交通事故被害に遭ってしまった場合、妊婦さんの体調、赤ちゃんの安全確保が何より大事になるでしょう。
そのうえで、適正な慰謝料の支払いをしてもらえるよう示談交渉を確実に進める必要があります。
妊娠中の交通事故では、「事故のあとはすぐに病院で診察を受ける」、「医師、警察、相手方にも妊娠していることを伝える」、「出産するまで示談しない」、「赤ちゃんに影響があった際には事故との因果関係を証明し慰謝料請求をする」などが大切です。
そして、これらの対応は専門的な知識が必要で、相手方と示談交渉を進めていくのは心身ともに大変なストレスになるでしょう。
気になること、ご心配なことがある方は弁護士へのご相談をおすすめします。