交通事故でケガをした場合、ケガの治療費だけでなく慰謝料や会社を休んだ場合の休業損害などを請求できます。休業損害と聞くと会社員や自営業者など、働いて収入を得ている人が受け取れるものをイメージしがちですが、実は専業主婦でも請求可能です。
本記事では、主婦が交通事故に遭った場合に受け取ることができる賠償金の内訳とその計算方法について解説します。
交通事故に遭った主婦が受け取ることができる慰謝料
交通事故でケガをして、通院をしている主婦が受け取ることができる主な賠償金は以下の通りです。
- 治療費や薬代などの治療費
- 通院交通費
- 入通院慰謝料
- 休業損害
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
つぎからは、それぞれの概要や計算方法をご説明していきます。
慰謝料とは?慰謝料の概要と計算方法
慰謝料とは、交通事故でケガをしたことや、後遺障害が残ったことで生じた精神的な苦痛を慰謝する目的で支払われる賠償金です。
慰謝料には入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
本人の地位や収入、働き方によって金額が左右されることはありません。
主婦でもサラリーマンでも、通院日数やケガや症状の程度などが同じであれば同額となるべきものです。
入通院慰謝料の算定基準
入通院慰謝料の金額は、以下の3つの基準を用いて算出します。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判基準
自賠責基準がもっとも低額で裁判基準がもっとも高額となります。
自賠責保険に慰謝料請求するときは自賠責基準の金額が支払われ、被害者が相手保険会社と示談交渉をする場合は任意保険基準が提示されます。
裁判基準は、裁判になったときに用いられる算定方法ですが、弁護士に交渉を依頼したときは、相手保険会社との示談交渉でも裁判基準に基づいた交渉が可能となります。
任意保険基準と裁判基準は、同じ通院期間であっても2倍から3倍ほどの金額差があることが多いです。
自賠責基準での慰謝料計算方法
自賠責保険基準の慰謝料は、治療期間、もしくは実通院日数の2倍のいずれか短いほうに1日あたりの慰謝料金額4,300円をかけて算出します。
3ヶ月の間に20日通院をした場合は、40日に4,300円をかけた86,000円が慰謝料となります。
裁判裁判での慰謝料計算方法
裁判基準での慰謝料は、通院・入院等の日数が記載された表に当てはめて算定されます。
むちうちや捻挫などの軽傷のケガで1ヶ月通院をした場合の慰謝料は19万円です。
入通院慰謝料の金額に関するより詳しい情報は、下記でご説明しています。
後遺障害慰謝料の算定基準
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級が認定された場合、その等級に応じて算定されます。
後遺障害慰謝料でも3つの基準が存在し、もっとも高額なのは裁判所基準です。
むちうちの後遺障害で認定されることが多い14級の慰謝料を確認しておきましょう。
自賠責基準 | 裁判基準 | |
---|---|---|
後遺障害14級 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害慰謝料については、自賠責保険基準と裁判基準では最大3倍ほどの差が生じ弁護士に依頼をすることで裁判基準での請求が可能となります。
後遺障害慰謝料の金額に関するより詳しい情報は、下記でご説明しています。
主婦の逸失利益の概要と計算方法
逸失利益とは、後遺障害の等級認定を受けた際に請求できる賠償金で、後遺障害を負わなければ将来受け取ることができた利益のことを指します。
逸失利益は、基礎収入に労働能力喪失率と中間利息控除係数をかけて算定します。
基礎収入は、現在の収入を基準として計算します。労働能力喪失率とは、後遺障害の等級ごとに低下した労働能力を数値化したものです。
むちうちで認定されやすい14級の場合は5%、両目の失明などで認定される1級では100%となります。
主婦の場合、労働によって報酬を得ていませんが、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入として算定されます。
無収入の専業主婦であっても逸失利益を受け取ることは可能です。
逸失利益について詳しくは、下記の記事をご確認ください。
主婦の休業損害の概要と計算方法
休業損害とは交通事故のケガによって働くことができなかった場合や、医師によって休業が指示されていた場合に、働いていたら得られたはずの収入を賠償するものです。
専業主婦の場合、主婦業で収入を得ている訳ではありません。
したがって、休業損害は支払われないと考えられやすいですが、主婦についても休業損害は支払われますのでご安心ください。
自賠責保険基準の主婦の休業損害
無収入の主婦の休業損害は、自賠責保険では日額6,100円です。主婦の休業損害は6,100円に実入通院日数をかけて算定されます。
たとえば、90日間通院をした場合の休業損害は、549,000円です。
裁判基準の主婦の休業損害
裁判基準の主婦の休業損害は、厚生労働省による統計「賃金センサス」の女性労働者の平均賃金を365で割った金額が、1日当たりの休業損害とされます。
賃金センサスの日割り金額に受傷のために家事労働に従事できなかった日数を掛けたものが主婦の休業損害の総額となります。
実務では、実入通院日数を家事労働に従事できなかった日数とするのが一般的です。
賃金センサスの日額は概ね1万円程度と、自賠責保険基準よりも高額になります。
パート主婦の休業損害
パート主婦の休業損害は、実際のパート収入から基礎収入を算定しますが就業時間や日数が少ない場合には、主婦の休業損害のほうが高額になるケースもあります。
その場合は、主婦の休業損害にて算定されますので、「パートをしているせいで受け取れる休業損害が低額になる」というおそれはありません。
休業損害について詳しくは下記の記事をご確認ください。
主婦が交通事故の賠償金を適切に受け取るためには、弁護士にご相談を!
主婦が交通事故でケガをした場合でも、働いている方と同様に賠償金を請求できます。
慰謝料は主婦であってもサラリーマンと同額を受け取ることができますし、十分な金額の休業損害や逸失利益も請求可能です。
加害者側の保険会社と直接交渉をした場合は、いずれの賠償金も自賠責基準や任意保険基準で算定されてしまいます。
しかし、弁護士に依頼すれば裁判基準での慰謝料請求が可能となります。
主婦業は終わりがなく、また休みもない大変な仕事です。
その中に交通事故によるケガの苦しみや通院の手間が加わる訳ですから、ストレスは計り知れません。
加害者側との交渉に少しでもストレスを感じたら、弁護士へのご相談をおすすめします。