交通事故でケガをして、治療を受けたにも関わらず治癒しなかった場合、後遺症に応じて慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。後遺症に関する賠償金を請求するためには後遺障害等級の認定を受けていなければなりません。
そこで本記事では後遺障害等級の認定申請方法、必要な書類、結果に対する対応などについて解説します。
後遺障害とは?後遺障害等級認定の仕組み
まずは後遺障害の概要、後遺障害等級の認定を受ける仕組みについて解説します。
すでにご理解されている方はこの項目を飛ばして認定の流れに進んでいただいても構いません。
後遺障害とは?後遺障害等級の認定を受けると何が変わるのか
交通事故の損害賠償における後遺障害とは、交通事故でケガをして適切に治療を受けていたにも関わらず、麻痺やしびれ、痛みなどの症状が残ってしまい労働能力が低下して、後遺障害等級に該当すると認定された状態のことを指します。
後遺障害等級の認定を受けると、等級に応じた後遺障害慰謝料および、逸失利益の請求が可能となります。
逸失利益とは、将来にわたって得ることができたはずの利益のことを指します。
つまり、後遺障害等級の認定を受けると、加害者側から受け取り可能な賠償金が増えるということです。
後遺障害等級認定の仕組み
後遺障害等級の認定は、加害者側の任意保険会社や自賠責保険会社が独自に行っているわけではありません。
損害保険料率算出機構という機関が必要書類を精査して、後遺障害等級の認定の可否や等級について決定しています。
損害保険料率算出機構とは、損害保険業の健全な発展と契約者等の利益を保護する目的で運営されている組織です。
自賠責保険の損害調査、保険料率の算出や算出するために必要なデータの提供、データバンクという3つの役割を果たしています。
この中で、後遺障害等級の認定は、「自賠責保険の損害調査」に属しています。
被害者側、加害者側いずれにも属さない公正な判断をする組織として、後遺障害等級の認定に取り組んでいるのです。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級認定は、以下の流れで進みます。
治療開始から症状固定まで
交通事故でケガをして、後遺障害等級の認定を受けるために必要不可欠なのがケガの適切な治療です。
医師の指導のもと、きちんと治療を継続していたにも関わらず症状が残ってしまったという状況でなければ、後遺障害等級の認定は難しくなります。
たとえば、事故後1度通院しただけで3ヶ月後に症状が残っているから後遺障害等級の申請をしても、適切な治療を受けていないため後遺障害が認められない可能性があるのです。
適切な治療を一定期間受けてもケガが完治しない場合は、医師が、症状固定といってこれ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態と判断します。
申請方法には事前認定と被害者請求がある
症状固定と診断されて、労働能力が長期にわたって低下するような症状が残っている場合は、後遺障害に該当する可能性があるため、後遺障害等級の認定を受けるための手続を行います。
後遺障害等級の認定の手続きは、事前認定と被害者請求の2通りがあります。
事前認定とは、加害者側の任意保険会社が損害保険料率算出機構に必要書類を送付して、後遺障害に該当するかどうかの判断を求める手続きです。
被害者請求は、被害者(または依頼した弁護士など)が後遺障害診断書やレントゲンなどの検査結果を用意して、自賠責保険会社に書類を送付します。
それぞれの詳しい手続きについては次の項目で説明をします。
一般的には、事前認定よりも被害者請求のほうが後遺障害等級の認定が受けやすいといわれています。
認定内容に不服がある場合の手続き
後遺障害等級の認定は、必ずしも希望する結果になるとは限りません。
等級が認定されないことや、想定とは違う等級が認定されることもあり、認定の可否や、等級の決定に納得ができない場合は、以下の3つの選択をすることができます。
保険会社への異議申立て
事前認定、被害者請求のいずれの場合も、窓口となっている任意保険会社や自賠責保険会社に異議申立書などの必要書類を送付することで、再度調査をしてもらうことができます。
ただし、後遺障害診断書の修正や追記、その他症状を伝えるための資料がなければ同じ結果になる可能性が高いです。
異議申立ては、時効を迎える前であれば何度でも行うことができます。
異議申立てについては、下記の記事で詳しくご説明しています。
自賠責保険・共済紛争処理機構への申請
第三者である専門家で構成される紛争処理委員会が保険金支払い内容の妥当性を審査する自賠責保険・共済紛争処理機構に、後遺障害の認定の可否や、等級についての調停を求めることもできます。
同機構への申請は1度のみと規定されています。
訴訟
後遺障害の該当の可否や等級、また慰謝料の金額などについて、裁判を起こすことも可能です。
ただし、裁判は判決がでるまでに時間がかかり、賠償金の受け取りが遅くなる、裁判費用がかかるなどのデメリットもありますので、それに見合った賠償を受けられるかどうかを慎重に検討する必要があります。
事前認定と被害者請求の申請方法
次に、事前認定と被害者請求の申請方法を詳しく解説します。
事前認定の手続方法
事前認定の手続きは、主に加害者側の任意保険会社が行います。
被害者がやるべきことは、治療を受けることと、医師に後遺障害診断書を作成するように依頼することです。
その後は、保険会社担当者が後遺障害の事前認定に必要な書類やレントゲン等の資料を集めて損害保険料率算出機構に送付します。
事前認定は被害者が自分で行う手続きがほとんどないため、手間をかけず後遺障害の等級認定の申請が可能です。
ただし、保険会社の担当者が主導して行いますので被害者の意思を反映した内容にならず、思うような結果が得られない可能性があります。
被害者請求の手続方法
被害者請求は、被害者もしくは被害者の代理人である弁護士が加害者の自賠責保険会社に対して、後遺障害等級の認定を申請する手続です。
医療機関から後遺障害診断書や検査結果、画像資料などを取り寄せ、書類を作成するなどの手続きはすべて被害者、もしくは弁護士が行わなければなりません。
後遺障害の被害者請求に必要な書類は主に以下の通りです。
- 保険金・損害賠償額・仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診断書、診療報酬明細書
- 印鑑証明
- 後遺障害診断書
- レントゲン等の画像資料
被害者請求は、事前認定よりも手続きは困難ですが、被害者が自分で書類を手配できる分、後遺障害等級の認定に向けた万全の対策を取ることができます。
手続きを弁護士が行った場合は、後遺障害等級が認定されるために必要な書類、検査などを熟知しているため、認定される確率は高まります。
後遺障害申請の疑問は弁護士に相談
交通事故でのケガが完治せず、後遺症が残っている場合は後遺障害等級の認定を受けて、慰謝料等の賠償金を受け取れる可能性があります。
しかし、加害者任せの事前認定では、後遺障害等級の認定を受けるために最大限尽力されているとはいえませんし、ご自身での手続は手間がかかる上に正確な書類作成ができないおそれもあります。
後遺障害等級の認定については、弁護士へのご相談をおすすめします。