物損事故から人身事故に切り替えるメリット。物損扱いで慰謝料請求する方法

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交通事故の物損扱いについて

「物損事故で扱われていて慰謝料請求でトラブルになった」というお悩みを時々聞きます。交通事故は人身事故と物損事故の2つに分けられますが、物損事故として扱われていると、治療費や慰謝料などの賠償金を請求できない可能性があります。ケガがあるのに賠償金を受け取れないことにならないよう、人身事故への切り替え、加害者保険会社に支払いを認めてもらうなどの対応をしていきましょう。
ここでは、人身事故と物損事故の違いや、物損扱いになっているケース、人身事故扱いへの変更手続きなどをお伝えしていきます。

人身事故と物損事故の違い

まずは、人身事故と物損事故の違いについてご説明します。

人身事故

交通事故によってケガをした人や亡くなられた人がいる場合は、原則として人身事故として扱われます。

人身事故の場合、交通事故の加害者は刑事責任が問われ、被害者は加害者に対して治療費や慰謝料などの賠償金を請求することができます。

物損事故

交通事故による死傷者がおらず、自動車や車内にあった物が損壊した場合は物損事故として扱われます。

物損事故では、自動車の修理費などを請求できます。

いっぽうで物損事故の場合は、慰謝料の請求は原則としてできません

なお、警察では物損事故のことを物件事故と言います。

人身事故扱いになっているか確認する方法

交通事故でケガをし、賠償金を加害者に請求する場合は、基本的に人身事故として扱われている必要があります。

物損事故のまま進めてしまうと後々にトラブルになりかねませんので、人身事故と物損事故のどちらで扱われているかきちんと確認しましょう。

確認は交通事故証明書という書類で行うことができます。

交通事故証明書は、警察に交通事故の連絡をすると必ず作成される書類で、加害者への賠償金の請求や労災保険の申請、後遺障害等級の申請などでも必要となる書類です。

交通事故が発生した日時や場所、加害者と被害者の情報などが記載されており、書類の右下には人身事故もしくは物件事故と必ず記載されています。

交通事故証明書は下記の3つの方法で取得できます。

交通事故証明書の取得方法

  • 自動車安全運転センターへ行き、窓口で申請
  • 警察署で申込用紙を取得し、郵便局・ゆうちょ銀行で申請
  • 自動車安全運転センターのホームページで申請

自動車安全運転センターは、警察から交通事故資料が届いていれば、原則として申請当日に交通事故証明書を発行してもらえます。

郵便局・ゆうちょ銀行とホームページは郵送になるため、手元に届くまで10日前後かかります。

交通事故証明書が急ぎで必要な場合は自動車安全運転センターまで行き、時間に余裕があれば郵便局・ゆうちょ銀行やホームページで申請するのがいいでしょう。

なお、交付手数料540円がかかります。

交通事故証明書の申請に関する詳しい情報は自動車安全運転センターのホームページに掲載されています。

人身事故が物損事故扱いになる理由

ケガをしているから本来は人身事故として扱われるはずなのに、物損事故で手続きが進んでしまうことがあります。

主に、後からケガをしていることがわかった場合、加害者から物損事故のままにしてほしいとお願いされた場合に、物損事故になっていることがあります。

後からケガをしていることがわかった場合

交通事故直後は痛みがなく、数日経ってから痛みが出てきたような場合、事故直後はケガをしていないと思って対応していたため、警察では物損事故として扱われていることが多くあります。

後からケガをしていることがわかった場合は、早めに人身事故への変更手続きを行いましょう

加害者からお願いされた場合

加害者から「慰謝料などはきちんと支払うので物損事故のまま手続きを進めさせてほしい」と頼まれるケースもあります。

加害者の立場から見ると、人身事故だと交通違反の点数が加算されて免許停止や取り消しになる可能性がありますが、物損事故なら、このリスクが低くなります。

また、物損事故だと刑事処分を受けることはほとんどありません。

加害者にこのようなメリットがあるので、「物損事故のまま手続きを進めさせてほしい」とお願いされることがあるのです。

加害者の保険会社がきちんと慰謝料を支払うことを約束しているなら、物損事故扱いで手続きを進めても問題はありません。

物損事故扱いを認めると、加害者が処分を受ける可能性が低くなりますので、加害者に対する感情(罰せられてほしいか)などで判断をしていきましょう。

物損事故扱いだった場合の治療費や慰謝料への影響

加害者から「慰謝料は支払うから物損事故にしてほしい」と言われている場合は、保険会社は人身事故の場合と同じように治療費慰謝料を支払ってくれるでしょう。

そうではない場合は、保険会社が支払いを認めてくれるかがポイントとなります。

たとえば、後から痛みが出た場合に、保険会社が交通事故との因果関係(交通事故によるケガなのか)を認めない場合は、物損事故扱いだと治療費や慰謝料の支払いを拒否される可能性があります

このトラブルは、人身事故への切り替えが認められれば解消できる可能性がありますので、切り替える手続きを早めに行いましょう。

物損事故を人身事故に切り替える方法

ここからは物損事故から人身事故に切り替える方法をご説明します。

人身事故への切り替えは簡単にできるわけではなく、病院や警察への手続きが必要となりますので、余裕を持って行うようにしましょう。

人身事故への切り替え方法

  1. 病院で診察を受けた際に医師の診断書をもらう
  2. 交通事故を管轄する警察に連絡をし、訪問の予約をする
  3. 診断書、運転免許証、印鑑などを持って、警察に届け出を行う
人身事故への切り替えは早めに

手続きを行うと、警察が人身事故への切り替えが妥当か捜査を行います。

切り替える際は、交通事故の加害者も出頭するケースが多いため、加害者側にあらかじめ伝えておくほうが良いでしょう。

物損事故から人身事故への切り替えに期限はありませんが、交通事故後できるだけ早め(1週間から10日が目安)に行うようにしてください。

後から痛みが出た場合は、痛みが出たらすぐ病院に行って診断書をもらってください。

交通事故から日にちが経過していると、交通事故とケガの因果関係を証明しづらくなり、警察が人身事故に切り替えてくれない場合があります。

人身事故に切り替えない場合、切り替えができなかった場合

人身事故への切り替えができなかった場合は、人身事故証明入手不能理由書という書類を提出しましょう。

人身事故証明入手不能理由書は、事情があって警察に届け出ができなかったことを示す書類で、保険会社の担当者からもらうことができます。

加害者の保険会社に提出することで慰謝料などの支払いを受けられる可能性があります。

ただし、「保険会社が認めれば」という条件がついてしまうので、あくまで人身事故への切り替えができなかった場合の手段として覚えておきましょう。

慰謝料請求の疑問は弁護士に相談

物損扱いで「慰謝料や治療費はきちんと支払う」と保険会社が約束をしてくれた場合でも、相場の慰謝料が支払われるわけではありません。

保険会社が提示してくる金額は相場以下のことが多いので、きちんと示談交渉を行いましょう。

慰謝料の増額交渉を弁護士に任せることで、相場の慰謝料を受け取れる見込みが高まります

また、人身事故への切り替えや物損扱いでの慰謝料請求で保険会社とトラブルになってしまった場合も、弁護士へのご相談をおすすめします。