交通事故の被害にあい死亡した場合には、加害者に対して損害賠償請求することになります。死亡事故の損害賠償では、慰謝料をはじめ、葬儀費用や逸失利益などを請求することができます。
ここでは、死亡慰謝料の計算方法や相場、請求できる賠償金、死亡事故で弁護士に相談をするメリットなどを死亡事故のご遺族に向けてご説明していきます。
死亡慰謝料とはどのようなものか
まず、慰謝料がどのようなものなのか確認しましょう。
交通事故被害で支払われる慰謝料には、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
死亡慰謝料は被害者が死亡したことによって発生する慰謝料で、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料があります。
被害者本人の慰謝料
交通事故で死亡した本人に発生した精神的苦痛に対する慰謝料が支払われます。
事故後、治療期間を経て亡くなってしまった場合はもちろん、事故で即死したような場合にも精神的苦痛が発生していたと考えます。
しかし、事故被害者の方は亡くなっていますので、事故被害者のご家族(相続人)が慰謝料請求権を受け継いで請求することになります。
遺族の慰謝料
交通事故で身内を亡くした遺族にも精神的苦痛が発生するので、慰謝料が発生します。
事故被害者の父母、配偶者、子どもが遺族の慰謝料の支払い対象となります(対象となる遺族を請求権者と言います)。
死亡慰謝料の計算方法
交通事故で被害者が死亡した場合の慰謝料の計算方法をご説明していきます。
交通事故被害の慰謝料計算には次の3つの基準があり、この基準を把握しておくことがとても大切です。
どの基準で計算するかによって慰謝料の金額が大きく変わります。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険で支払われる慰謝料の金額です。
自賠責保険基準では、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料がそれぞれ支払われます。
まず、被害者本人の慰謝料として400万円が支払われます(2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は350万円です)。
また、遺族の慰謝料については、請求権者の人数で金額が変わります。
請求権者の人数 | 慰謝料の金額 |
---|---|
1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 |
3人以上 | 750万円 |
- 請求権者に被扶養者がいる場合は、上記に200万円が追加されて支払われます。
自賠責保険は交通事故の被害にあったときに最低限の保障をするもので、実際にはこれ以上の慰謝料が支払われるべきとされています。
この金額差を加害者(加害者が加入している任意保険会社)に請求することになります。
任意保険基準
上述したとおり、自賠責保険は最低限の補償で、自賠責保険でカバーできない分を、加害者の任意保険に請求していくことになります。
任意保険会社は、会社内部で決められた独自の基準で交通事故の被害者と交渉をすることで知られており、その基準額を任意保険基準と呼んでいます。
会社独自で基準を作っているものなので、公になっているものではないのですが、下記のような慰謝料を提示してくることが多いです。
交通事故で死亡した方 | 死亡慰謝料 |
---|---|
家計を支える一家の支柱 | 1,100万円~1,400万円程度 |
配偶者・専業主婦(主夫) | 1,300万円~1,600万円程度 |
子ども | 1,200万円~1,500万円程度 |
高齢者 | 1,100万円〜1,400万円程度 |
- 金額は推定です。
裁判基準
裁判基準は交通事故の慰謝料請求で裁判をした場合に認められる金額です。
弁護士に依頼して慰謝料請求を行う場合、弁護士は裁判基準の金額をもとに相手保険会社に慰謝料請求を行うため、弁護士基準とも言われています。
裁判基準での死亡慰謝料の金額は次の通りです。
交通事故で死亡した方 | 慰謝料の金額 |
---|---|
家計を支える一家の支柱 | 2,800万円〜3,600万円 |
配偶者・専業主婦(主夫) | 2,000万円〜3,200万円 |
子ども | 1,800万円~2,600万円 |
高齢者 | 1,800万円~2,400万円 |
自賠責基準、任意保険基準に比べ、裁判基準が一番高額で死亡慰謝料の相場金額とも言えます。
さらに死亡慰謝料が増額されるケースもある
次のようなケースでは、死亡慰謝料が相場よりも増額される可能性があります。
被害者が後日亡くなった
交通事故の直後に入院をして治療を受けていたものの、治療の甲斐なく後日に死亡したケースでは慰謝料が増額されることがあります。
入院や通院をしていた期間にも慰謝料が発生し、死亡慰謝料に上乗せして請求することになるからです。
無免許運転、飲酒運転など
交通事故の原因が、加害者の無免許運転・飲酒運転・居眠り運転のような場合や、加害者がひき逃げをしたような場合は、加害行為が悪質であるとして死亡慰謝料の金額が増額されることがあります。
加害者の事故後の対応に誠意がない
加害者が被害者およびその遺族に対して謝罪をまったくしないような場合や、交通事故の原因が被害者にあるといった虚偽の供述をするなど、事故後の対応に誠意がない場合があります。
このような場合には被害者の精神的苦痛も増すといえるので、慰謝料が増額される場合があります。
死亡事故で請求できる賠償金
死亡事故では慰謝料以外にも加害者に請求できる賠償金があります。
治療費・入院費
交通事故の被害者が亡くなるまでの間、病院に入院していたら、その間にかかった入院費用や治療費などを請求することができます。
こちらは実費をそのまま請求します。
葬儀に関する費用
被害の葬儀を行った際にかかった費用を請求できます。
お布施・読経・戒名料、火葬費用など、葬儀関係があるものを対象に請求をすることになります。
葬儀費用は全額が支払われるわけではなく、120万円~150万円程度が上限となります。
逸失利益
交通事故の被害者が死亡していなければ得られていた将来の利益(収入など)のことを逸失利益と言い、逸失利益も加害者に請求することができます。
逸失利益の計算は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数」という計算式で求めることになります。
逸失利益は計算が非常に複雑なため、弁護士に相談して請求することをおすすめします。
慰謝料の請求方法
慰謝料および上記のその他の金額はどのように請求していくのでしょうか。
加害者の任意保険会社と示談交渉をする
慰謝料は交通事故の加害者に請求するものですが、実際には加害者が加入している任意保険会社から支払われます。
そのため、保険会社と示談交渉をして支払ってもらうことになります。
保険会社は上述したように独自の保険会社基準で金額を提示してきますので、示談交渉で裁判基準での支払いを求めることになります。
これに保険会社が応じないのであれば保険会社を相手に裁判を起こすこともあります。
保険会社の担当は示談交渉に慣れているため、ご自身での交渉は非常に厳しいことがほとんどです。
示談交渉は弁護士に依頼をするメリットが大きい
交通事故の示談交渉は弁護士に依頼をするメリットが非常に大きいです。
保険会社と交渉をする際には、慰謝料をはじめとした損害賠償請求に関する知識や交通事故そのものに対する知識が不可欠です。
提示された金額が任意保険基準である場合には、裁判基準で計算して主張する必要がありますし、保険会社からは被害者にも過失があるなどのさまざまな主張がされます。
この交渉の際に保険会社は非常に強い態度で迫ってくるので、ご遺族が示談交渉を行うと、根負けしてしまって低い金額で示談をしてしまうことが多いです。
弁護士に依頼をすると、交渉や計算を弁護士に任せることができ、相場の慰謝料を獲得することができるという大きなメリットがあります。
交渉がまとまらず、裁判になった場合も弁護士に依頼していれば安心です。
弁護士のサポートを受けて損害賠償請求を行いましょう
死亡事故の慰謝料請求を弁護士に依頼して行うと弁護士費用はかかりますが、その分、慰謝料などの賠償金が増額される可能性が高くなり、ご遺族の負担も大きく軽減されます。
交通事故で被害者の方がなくなったあと、ご遺族の方のショックは大きいものですし、葬儀などご遺族がやることはたくさんあります。
その中で慰謝料請求までご遺族が行うことはとても大変だと思いますので、弁護士のサポートを利用して少しでも負担を軽減してください。
また、弁護士費用特約に加入している場合には、特約を使うことで弁護士費用の負担がなくなる可能性も高いです。