高速道路での事故の過失割合。追突された側にも過失がつきやすい理由は?

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高速道路で起こった事故の過失割合

高速道路では、ちょっとした注意不足が重大な事故の原因になりかねません。また、走行速度や交通状況は一般道とは異なります。そのため、高速道路で事故が発生した場合、過失割合においては一般道とは異なる判断がされます。たとえば、追突事故では被害者にも過失がつくケースがあります。
ここでは、追突事故、合流、車線変更を中心に、高速道路で起こった事故の過失割合をご説明します。

高速道路での交通事故では過失割合がポイントになりやすい

交通事故で被害に遭った場合、ケガの治療や後遺障害の等級認定の後に示談交渉を行い、慰謝料をはじめとする損害賠償の金額を決めます。
高速道路で発生した事故で示談交渉をする時は、基準となる過失割合が一般道の事故と異なる可能性が高いことに注意しましょう。

過失がつくと受け取る慰謝料が減額されますので、過失割合が妥当か、慎重に判断していくことが求められます。

高速道路での交通事故は、被害者側にも過失がつきやすい

高速道路での事故は、加害者と被害者の双方に過失がつくケースが多く、一般道での事故と比べると被害者の過失が重くなることもあります。
たとえば、追突事故の被害にあった場合、一般道では追突された側には過失がつかないケースが多いですが、高速道路では追突された側にも過失がつきやすいです。

これは「高速道路では止まってはいけない」という高速道路特有の原則があるからです。
渋滞中などの止まらざるを得ない状況でない限り、高速道路の自動車は走行し続けることが想定され、その上で事故が起きないよう注意しなければなりません。

また、歩行者対自動車の交通事故の場合、一般道での事故は歩行者に過失がつかないケースが多いですが、高速道路では、歩行者に自動車と同等の過失がついたり、歩行者の過失のほうが重くなったりすることもあります。
歩行者が高速道路上へ侵入することは禁止されており、自動車が故障し車外に出ざるを得ない場合でも、歩行者に過失が付きます。

高速道路での追突事故で過失がつくケース、つかないケース

高速道路での追突事故

高速道路における追突事故の過失割合を確認していきましょう。
駐停車中に追突された事故と、お互いが走行中に追突された事故の過失割合をご説明いたします。

なお、ご説明するのは自動車対自動車の過失割合で、自動車対バイクの事故ではバイク側の過失が10%程度軽くなる傾向があります。

高速道路に駐停車した自動車が追突された場合

高速道路に駐停車した自動車が追突された場合のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
駐停車していた理由に落ち度がある 追突した自動車60:追突された自動車40
駐停車の理由に落ち度はないが、駐停車後の対応に落ち度がある 追突した自動車80:追突された自動車20
追突された自動車に落ち度がない 追突した自動車100:追突された自動車0

駐停車中に追突された事故では、駐停車していた理由や駐停車した後の対応に落ち度があるかどうかで過失が変わります。
まず、「駐停車していた理由の落ち度」とは、ガス欠で高速道路上に停車してしまった場合など、注意して運転していれば防げたケースが当てはまります。
駐停車の理由に落ち度があれば、追突された側にも40%の過失がつきます。
次に、「駐停車後の対応の落ち度」とは、停止表示機材(三角表示板など)の設置を怠った、安全な場所への避難を怠ったなどが該当し、追突された自動車にも20%の過失がつきます。
「追突された自動車に落ち度がない」状況とは、渋滞や料金所の順番待ちなどで停車していた場合などのことです。
また、安全を確保するためにやむを得なく路側帯に車を止めて、そこで追突された場合も被害者に過失は付きません。

急ブレーキによる追突事故の過失割合

急ブレーキによる追突事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
理由なく急ブレーキをかけて追突された場合 追突した自動車50:追突された自動車50

高速道路では、事故の危険を回避するなどの正当な理由がある場合を除き、急ブレーキをかけることは禁止されています。
そのため、前方車が理由なく急ブレーキをかけたと判断されると、追突された側も50%の過失となります。
ただし、追突事故の発生が分岐点や出入り付近であれば、上記より追突した側の過失が重くなります。
反対に、追い越し車線で急ブレーキをかけたケースや、前方車のブレーキランプの故障など、後続車が急ブレーキに気がつきにくい事情があると、追突された側の過失が重くなることもあります。

合流地点での接触事故は合流車の過失が重くなる

インターチェンジやサービスエリア、パーキングエリアからの合流を苦手としている人は多く、高速道路の中で交通事故が発生しやすいスポットです。
合流地点で衝突事故が発生した場合、合流する側の車両に重い過失がつきます。
どちらも自動車だった場合、一方がバイクだった場合それぞれの過失割合をご紹介します。

合流地点での交通事故の過失割合

どちらも自動車の場合の合流地点での交通事故と、合流車がバイクの場合の合流地点での交通事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
どちらも自動車 本線車30:合流車70
本線車がバイク 本線車20:合流車80
合流車がバイク 本線車40:合流車60

本線車30:合流車70が基本割合で、バイク事故の場合は、バイク側の過失が10%程度少なくなる傾向があります。
ここから事故時の状況によって過失の修正が行われます。
たとえば、合流車を邪魔するように、本線車が合流地点の直前で急加速をしていたら、急加速の程度に応じて10〜20%程度の過失が加算されます。
また、本線車または合流車に前方不注意があったり、携帯電話やスマートフォンを操作していたりした場合は、事故の原因になった著しい過失とみなされ、10〜20%程度の過失が加算されます。

車線変更時の事故は車線変更側の過失が重い

車線変更時の交通事故

次に車線変更時の衝突事故の過失割合をご説明します。
車線変更時の事故は、基本的には車線変更をした自動車の過失が重くなります。
ただし、事故状況のちょっとした違いによって過失が変わるため、正確な判断は簡単ではありません。
走行速度や交通ルールの厳守といったお互いの運転状況だけでなく、高速道路のどこで事故が発生したかでも過失が修正されます。
基本割合は、走行車線から追い越し車線に車線変更をした場合と、そのほかの車線での車線変更の場合に分けられます。

車線変更時の交通事故の過失割合

追い越し車線に車線変更する場合の交通事故と、そのほかの車線変更の場合の交通事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
追い越し車線に車線変更 直進車20:車線変更車80
そのほかの車線変更 直進車30:車線変更車70

追い越し車線への車線変更は、ほかの車線への変更よりも車線変更車の過失が10%程度大きくなる傾向にあります。
追い越し車線は速い速度で走行しているため、車線変更をする自動車は、そのことを注意したうえで車線変更するべきだと考えられているからです。
さらに、走行状況や事故の発生場所によって過失割合が修正されます。
たとえば、直進車に速度違反があったり、事故が分岐点や出入り口付近で発生していたりすると、直進車の過失が10〜20%程度加算されます。
分岐点や出入り口付近で直進車の過失が増えるのは、直進車も車線変更を予測しやすいことが理由です。
一方、車線を変更する車は、ウインカーの出し忘れ、出すのが遅かったなどの事情があると、過失が10〜20%程度加算されます。

高速道路上での歩行者と自動車の事故

原則として、高速道路上を歩行者が通行することは法律で禁止されています。
ただし、自動車が故障した場合など、止むを得ず高速道路上に出ることもあります。
歩行者が高速道路で事故にあった場合、過失は次のようになります。

駐停車車両の近くにいた歩行者の事故の過失割合

駐停車した自動車の近くに歩行者がいた場合の事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
駐停車した自動車の近くに歩行者がいた場合 歩行者40:自動車60

この際の「近く」とは、自動車から10m程度を指します。
止むを得ず高速道路上に出る理由があったとしても、歩行者にも過失がつきます。
停止表示器材を設置している最中の事故の場合は、歩行者の過失が20%程度低くなります。
また、歩行者、自動車のいずれかに確認不足があったことが事故の原因だと、著しい過失または重過失があったと判断されて歩行者は10〜20%、自動車は10〜30%程度過失が重たくなることがあります。

高速道路上を歩いていた歩行者と自動車の事故の過失割合

高速道路上の歩行者と自動車の事故のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
本線車道に歩行者がいた場合 歩行者80:自動車20

駐停車した自動車から出た後、何かしらの事情で高速道路内を歩いていた歩行者と衝突した場合、過失割合は、歩行者80:自動車20となり、歩行者の過失が高くなります。

前方車両が障害物を落として発生した事故の過失

トラックの荷台やルーフキャリアなどから荷物が落ち、後続車と衝突することがあります。
落下物により事故が発生した時は、過失は前方者のほうが重く、下記のような過失割合になります。

落下物による交通事故の過失割合

前方車からの落下物で、後続車が事故にあった場合のイメージイラスト
事故の詳細 過失割合
前方車からの落下物で、後続車が事故にあった場合 後続車40:前方車60

前を走るトラックなどから落下物があり、後続車が事故にあった際の過失割合は、後続車40対前方車60です。
後続車が落下物と衝突しなかったものの、回避しようとして他の車や障害物に接触した場合も同様の過失割合が適用されます。
なお、一口に落下物と言っても、物の大きさや発見しやすさ、接触した際の影響はさまざまです。
ここで紹介している過失割合は、落下物の危険性を比較的近距離で認識でき、接触した際にハンドルやブレーキに影響を与える可能性が高いものが当てはまります。

高速道路での事故の相談は弁護士に

高速道路での交通事故は、一般道の事故より被害が大きくなりやすいため、危険な運転や注意を怠った側の過失が加算される傾向が強くなっています。
過失が10%異なると、過失相殺後の賠償金額が数十万円から数百万も変わることがあります。
高速道路で交通事故の被害にあったら、相手保険会社から賠償金額や過失割合の提示を鵜呑みにするのではなく、まずは弁護士などの専門家の意見を聞いてみましょう。
弁護士への相談がきっかけで、示談の内容が大きく変わるかもしれません。