「当て逃げで慰謝料を請求したい場合どうすればいいの?」「ひき逃げ被害相手から、きちんと賠償をしてもらいたい」など、当て逃げ・ひき逃げの被害者の方にとって気になるのが、加害者から適正な慰謝料を支払ってもらえるかということ。
ここでは、当て逃げ事故やひき逃げ事故の被害に遭ってしまった際に、被害者側がどのような対応を取るべきか、対処方法などを記載していきます。
当て逃げとひき逃げは違う?
はじめに、当て逃げ事故とひき逃げ事故の違いについて確認していきましょう。
当て逃げもひき逃げも同じ犯罪行為になりますが、言葉の意味や加害者側に課せられる刑事罰の重さ、被害者に支払われる慰謝料などの賠償金に違いがあります。
自分の交通事故被害が当て逃げか、ひき逃げかで被害者側の対処も異なるため、それぞれの明確な違いを把握したうえで事故の判断をしましょう。
当て逃げは物損事故
当て逃げとは、交通事故において加害者が被害者の自動車を壊すなどの物損事故を起こし、現場から逃げてしまうことをいいます。
物損事故なので、交通事故の被害者がケガをしていないケースが該当します。
加害者は、道路交通法上、交通事故が起きた際に警察に報告する義務がありますが、当て逃げをして警察に報告しなかった場合、報告義務違反の責任が発生します。
そして当て逃げの加害者には1年以下の懲役、または10万円以下の罰金(道路交通法72条1項後段、119条の10号)が課せられることになります。
ひき逃げは人身事故
ひき逃げとは、交通事故により被害者にケガを負わせたり、死亡させたりしてしまった加害者が事故現場から逃げてしまうことをいいます。
当て逃げが物損事故なのに対し、ひき逃げは人身事故となります。
ひき逃げをした加害者には、道路交通法上、交通事故の報告義務違反の責任が発生し、また、被害者を救済する措置を講じなければ道路交通法上の救護義務違反にもなります。
ひき逃げ事故の場合、道路交通法上、10年以下の懲役、または100万円以下の罰金(道路交通法72条1項前段、117条2項)が加害者に課せられることになります。
また、それとは別に交通事故を起こした時の状況に応じて、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法)等の罪にも問われることになります。
当て逃げ(ひき逃げ)被害にあったら
当て逃げ、もしくはひき逃げの被害に遭ったら、しかるべき対処をする必要があります。
正しい対応を取ることが、その後の加害者の発見や賠償金の支払いに繋がることもありますので、事故後の対応は重要です。
警察に連絡をする
ケガの有無や損害の程度に関わらず、当て逃げもしくはひき逃げされた場合には、すぐ警察に連絡をしましょう。
たとえば、道路走行中に車と接触したのに、相手は逃げてしまい行方が分からなくなってしまったケースや、駐車スペースなどで車体にぶつけられた跡があることに気づいた場合などでも通報する必要があります。
交通事故が起きたら、運転者は警察へ連絡することが義務付けられています。
これは、加害者でも被害者でも同様のことです。
警察に連絡をすれば事故状況の調査をし、加害者を特定するために捜査を行ってもらうことができます。
また、交通事故が起きたことを証明する交通事故証明書は、警察へ事故の届出をしないと発行されません。
交通事故証明書がないと事故が起きた証明ができないため、加害者が見つかったとしても損害賠償請求や保険会社への保険金請求ができなくなる可能性がありますので気をつけましょう。
証拠や目撃者の確認
当て逃げやひき逃げで加害者が逃げてしまった場合、防犯カメラやドライブレコーダーに、加害者車両の車種やナンバーなどが映っている可能性があります。
特に駐車場での事故であれば、防犯カメラが設置されていることも多く、それが犯人を見つける証拠になる可能性があります。
防犯カメラなどの録画記録の保管期限は短いケースも多いため、事故後素早く対応する必要があります。
また、交通事故の目撃者がいる場合、目撃者の確保や連絡先の交換も重要です。
事故の目撃者がいれば、警察への証言をお願いしましょう。
事故後、現場に居続けることができなくても連絡先を交換するなどして後日にでも証言してもらえるよう相談しておくことがポイントです。
目撃者を後から探すのは困難なケースが多いため、事故直後の対応がとても重要といえます。
病院で診察を受ける
ケガをしていたら当て逃げではなくひき逃げになり、加害者の罰則も重くなり被害者が加害者に請求できる慰謝料なども変わってきます。
そのため、「かすり傷程度だった」、「ケガもないように思える」だったとしても病院で検査をしてもらい診断を受けましょう。
ケガは外傷とは限りませんし、事故直後はアドレナリンが出ていて痛みに気がつかないこともあります。
また、ケガをしていないと思って当て逃げで警察に処理をしてもらっていた場合、数日経ってから痛みが出てきたとしても、事故直後に病院に通院をしていないと交通事故と痛みの因果関係を証明できない恐れがあります。
その場合、後から犯人がわかっても治療費を請求できず、自分で負担する羽目になってしまうこともあり得ます。
事故に遭った後すぐに病院にてケガの有無をきちんと判断してもらい、ケガがある場合には診断書を受け取って警察へ提出し、物損事故ではなく人身事故扱いにしてもらいましょう。
自分の保険会社に連絡
当て逃げとひき逃げは、加害者の特定ができなければ、請求先不明のため相手方への損害賠償請求をすることはできません(ひき逃げは、政府保障事業を利用して補償を受け取ることはできます)。
このようなケースでは、ご自身が加入する自動車保険から支払われる保険金(人身傷害保険金)がとても重要となることがあります。
自動車保険に加入されている方は、保険会社に連絡して交通事故にあったことを伝え、保険金の支払いについて確認をしましょう。
当て逃げ・ひき逃げで犯人が見つからない時は
「当て逃げやひき逃げに遭った際、加害者を見つけることはできるのか」
このことを気にする方が多いと思います。
ドライブレコーダーや防犯カメラなどの証拠、目撃者からの証言、警察の捜査により犯人を割り出し特定できることもありますが、犯人を見つけられないケースもゼロではありません。
犯人が特定できない場合のことをご説明していきます。
犯人が見つからないときの補償制度
当て逃げやひき逃げの犯人を見つけられないケースでは、加害者への損害賠償請求とは異なる方法で補償を受けることを考えましょう。
方法は限定されますが、治療費などの自己負担を避けることができる可能性はあります。
被害者自身の自動車保険を利用
できることの1つ目は、被害者自身の自動車保険で対応をする方法です。
無保険車傷害特約や人身傷害保険に加入していると、当て逃げやひき逃げで発生した損害に対して保険金が支払われる可能性があります。
無保険車傷害特約も人身傷害保険も、保険を使用しても等級は変わりませんので、次の年以降の保険料を心配することなく使用できます。
政府の保障事業を利用
2つ目は、政府の保障事業を利用して対応をする方法です。
政府の保障事業とは、ひき逃げで加害者を特定できない場合や、無保険車との事故で被害に遭った際の救済措置として、政府が設定しているものです。
補償される金額は、加害者の任意保険に請求する際に比べると低額ですが、加害者に慰謝料請求できない変わりとして受け取ることができます。
なお、政府の保障事業は物損事故では適用されず、人身事故として被害者にケガが発生していなければ適用されません。
当て逃げ・ひき逃げの慰謝料請求
当て逃げやひき逃げの事故被害に遭い、後日、加害者を特定ができた場合に請求できる慰謝料をご説明します。
当て逃げの慰謝料請求
当て逃げ事故は物損事故となりますので、損害賠償請求できるのは物の損壊に対する補償のみとなります。
慰謝料は交通事故によりケガを負った精神的苦痛に対して支払われるものであるため、ケガをしていない当て逃げでは慰謝料が支払われないのでご注意ください。
なお、物損事故の一般的な損害項目は以下です。
当て逃げで請求できる損害の一例
- 車両破損による修理費
- 代車使用料
- 休車損害
- 評価損
ひき逃げの慰謝料請求
ひき逃げ事故によってケガを負ったり、ケガによる後遺症で後遺障害等級の認定を受けたりした場合に慰謝料など請求することができます。
ひき逃げであったとしても加害者に請求できる項目に違いはありません。
金額も他の人身事故と基本的には変わりませんが、ひき逃げが加害者の重大な過失と判断された場合に、相場以上の慰謝料が認められる可能性もあります。
ひき逃げで請求できる損害
- 治療費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
交通事故の慰謝料についてさらに詳しく確認したい方は、こちらもあわせてお読みください。
交通事故の慰謝料に関する相談は弁護士まで
当て逃げ事故やひき逃げ事故の被害に遭ってしまった場合には、速やかに警察に通報し、犯人を特定できるようにできることをやっていきましょう。
犯人が特定できたら、損害賠償請求を行い、適切な補償を受け取ってください。
犯人特定ができない時は、自分の保険会社や政府の保障事業を利用しましょう。
当て逃げやひき逃げに関するお悩み、その後の慰謝料請求での疑問点がある方は、弁護士へのご相談をおすすめします。
ご相談は無料です。おひとりで悩まず、お気軽にお問合せください。