交差点で停止していたり渋滞に捕まっていたりする時に、思いがけず、後方のバイクが車両の横をすり抜けていくことがよくあります。
毎年、バイクのすり抜けによる事故は多発しており、中には自動車側が多く損害賠償金を支払うこともあります。
この記事では、バイクのすり抜け事故について、事故ごとの過失割合や、すり抜けが違法となるケースを紹介しています。
バイクのすり抜けによる事故に遭った方や、すり抜け事故の過失割合に納得がいかない方は、この記事を参考にしてみてください。
バイクのすり抜けとは?
バイクのすり抜けとは一般的に、追い越しや追い抜きで前方の車両よりも前に出ることをいいます。
「追い越し」は車線変更をし、「追い抜き」は車線変更をせずに走行しますが、どちらも前方の車両の横を通過して前方に出るという点では共通しています。
バイクは自動車よりも車体が細いため、自動車の横をすり抜けることが多々あります。
前方の車両の運転手は、背後からバイクが近づいていることに気付きにくいため、交差点や渋滞などでは、バイクのすり抜けが原因でよくバイクと車両の衝突事故が起こっています。
バイクのすり抜け事故での過失割合
バイクのすり抜けで発生する事故には、どのようなケースがあるのでしょうか。
また、それぞれの事故の過失割合はどうなるのでしょうか。
過失割合が変わるケースも説明しているので、参考にしてみてください。
バイクがすり抜けた時に左折車と衝突
車両の左側をすり抜けるバイクとその車両が左折する時に衝突する事故で、一般的に「巻き込み事故」ともいいます。
基本の過失割合は、左折車8対バイク2です。
ほとんどの場合、左折車の過失割合は高くなり、車両側がバイク側の治療費や修理費を多く負担することになります。
バイクですり抜けた時に対向車線の右折車と衝突
すり抜けるバイクと対向車線から右折する車両との衝突事故です。
車両の左側をすり抜けるバイクと、対向車はお互いを確認することが難しいため発生します。
基本の過失割合は、右折車7対バイク3となります。
なお、下記の表のように事故の状況により車両とバイクとの過失割合は変化します。
こちらもほとんどの場合、右折車の過失割合のほうが高く、車両側がバイク側の損害の賠償を多く負担することになります。
バイクがすり抜けた時に開いた自動車のドアと衝突
停止している自動車の開いているドアに、すり抜けるバイクが衝突する事故です。
少しドアを開くだけでも衝突しやすくなります。
基本の過失割合は、自動車9対バイク1です。
ただし、バイク側がドアの解放を予測できた場合はバイク側に、また車両側がすり抜けの直前にドアを解放した場合は車両側に、過失が1割加算されます。
すり抜け事故の過失割合が変わるケース
現場や事故の状況により、過失割合が変化することがあります。
過失割合が変化する要因を「修正要素」といいます。
すり抜け事故の過失割合が変化する修正要素と過失割合をまとめると次の通りとなります。
すり抜け事故の基本の過失割合
修正要素と過失割合
現場や事故の状況次第で、過失割合が変化することがあるため、なるべく過失割合が減るように下記でまとめる内容を証明できるようにしましょう。
バイクのすり抜けは違法になる?
バイクのすり抜け自体は違法ではありませんが、走行中の状況によっては交通ルールに違反する場合があります。
正しい追い越しは、「1.進路変更→2.前方車両の右側を通行→3.進路変更」と言う流れで行い、右側通行が難しい場合は車両の左側を通行します。
追い抜きについてのルールは特にありませんが、追い越しと同様に他の車両と距離の近い走行となります。
なお、違法とはならない場合でも、事故が起きた時はバイク側に過失割合において過失が加算される場合もあります。
また、バイク側が違法となる走行で事故を起こした時は、過失割合において過失が加算される可能性が高くなります。
バイクのすり抜けで違法になるケース
では、どのような場合に、バイクのすり抜けが違法となるのでしょうか。
ケース別に説明していきます。
黄色の実線をはみ出した追い越し
道路にはさまざまな車線がひいてありますが、その中でも黄色の実線をはみ出して追い越しをした場合、違法行為に当たります。
黄色の実線は追い越しのためのはみ出しを禁止するという意味があります。
黄色の実線をはみ出さない追い抜きは違法ではありませんが、バイクがあえて接触しやすい走行をしているので過失割合において過失が加算される可能性があります。
追い越し禁止場所での追い越し
追い越し禁止の場所で追い越す走行は違法です。
代表的な追い越し禁止の場所はこちらです。
- 横断歩道
- 交差点
- 踏切
- 道路の曲がり角付近
- 上り坂の頂上付近
- 急勾配の下り坂
- トンネル
追い越し禁止の標識や黄色の実線がなくても、事故現場の状況により過失割合が変化する可能性があります。
追い越しによる割り込み
追い越しによる割り込みも違法になることがあります。
具体的には、停止中や徐行中の車両を追い越して、前に割り込む行為です。
狭い間隔に無理やり入っているかどうかが違法な割り込み成立有無のカギになるので、立証にはドライブレコーダーなどが有力な証拠となります。
路側帯にはみ出した追い越し
路側帯は歩行者用の通路のため、路側帯にはみ出す追い越しは違法です。
路外の場所への出入りや駐車などやむを得ない状況でない限り、路側帯に進入してはなりません。
すり抜け事故での損害賠償請求は弁護士に相談
この記事では、バイクのすり抜け事故について、事故ごとの過失割合や、違法なすり抜けのケースをまとめました。
走行中の自動車とすり抜けるバイクが衝突した場合、基本的にバイクの過失割合のほうが小さくなります。
しかし、事故の状況によっては過失割合が変化し、相手側から提示された過失割合が相当であるとは限りません。
過失割合に不満・疑問を感じる方は、一度弁護士へ相談することをおすすめします。
相手側と交渉して過失割合を変更してくれたり、より高額な賠償請求が可能になったりします。