管理職会社員の交通事故被害の正しい対応。大事なプロジェクトを外されたら?

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交通事故に遭った50代中間管理職サラリーマンのケース

重要な仕事を任されている会社員の男性がまさかの交通事故。ケガで仕事を欠勤せざるを得なくなり、大事なプロジェクトを外されて収入に大きな影響が出てしまったら…。
今回は、50代の管理職サラリーマンを想定した交通事故被害の正しい対応をご説明します。

休業損害、逸失利益で失った収入の補償を

課長、係長などの役職についているサラリーマンの方は、会社の中でも欠かすことができない存在。
会社にとって重要なプロジェクトや取引を任されていることも多いと思います。
そのような管理職のサラリーマンが交通事故に遭い、ケガによる入院や通院で長期の欠勤をしてしまったら…。
会社の収益も、被害者自身の収入にも大きなダメージになってしまいます。
会社は、代役を立ててプロジェクトを進めていくことができるかもしれませんが、被害者本人は収入減を避けられません。
このように交通事故によるケガが原因で収入が減ってしまった場合、その金額を休業損害逸失利益として加害者の保険会社に請求することができます。
50代の管理職のサラリーマンの方の中には、お子さんが高校、大学に通っていて学費などでお金がかかる方もいらっしゃるはずです。
子どもの学業に影響を与えないためにも、交通事故の影響で失った収入を加害者に請求していくことが大切です
ここでは、休業損害と逸失利益の詳細を計算事例を用いて具体的にご紹介していきます。

50代管理職会社員の休業損害計算例

管理職のサラリーマンの休業損害計算例

休業損害は、交通事故によるケガで仕事を欠勤し、収入が減ってしまった場合に受けることができる補償です。
交通事故に遭った時から、ケガが完治するまで、もしくは病院の医師に症状固定と診断された時までの期間に認められます。
保険会社から金額提示された際に、すでに賠償金に休業損害が含まれているケースが多いですが、弁護士が示談交渉を行うことで、その金額が大きく増える可能性があります。
その理由は、保険会社が休業損害を計算するときの基準と、弁護士が計算するときの基準が違うからです
保険会社は、自賠責基準または任意保険基準で休業損害の金額を計算します。
しかし、この金額は弁護士が示談交渉をする際に基準として用いる裁判基準に比べて低額のケースがほとんどです。
なぜ、金額差が生まれるかというと、自賠責基準の場合、休業1日あたりの補償金額が6100円と決められているのに対し、裁判基準は交通事故被害者の収入をベースに計算していくからです。
例えば、管理職のサラリーマンであれば、ご自身の収入を日給で計算し直した場合、6100円よりもはるかに高額だと思います。
そのため、裁判基準での支払いが認められれば、休業損害の金額は大きく増額するのです。

月収50万円で1ヶ月間入院のため欠勤をした場合

自賠責基準と裁判基準での休業損害の金額差を具体例でご紹介します。(以下、連続的に欠勤していることを前提とします)

自賠責保険基準の場合

「1日6100円×休業日数=休業損害」で計算します(2020年3月31日までに発生した交通事故の場合は1日5700円)。

1ヶ月間のが30日だったとすると、

6100×30=18万3000円

休業損害は18万3000円となります。

裁判基準の場合

「事故前3ヶ月間の収入の合計÷90(3ヶ月)×休業期間」で計算します。

休業期間は土日祝日を含んだ期間となり、休業期間が30日だとする

(50万×3)÷90×30=50万円

休業損害は50万円となります。

自賠責基準と裁判基準では、約3倍の差があります。
このように裁判基準で請求することで、受け取る休業損害の金額が大きく変わる可能性があります
なお、入院の必要がなく通院の時だけ仕事を休んだような場合には異なる計算方法を用いる場合もあります。

管理職会社員が逸失利益を請求できるとき

将来の収入減がある場合に請求できる逸失利益

逸失利益は、交通事故によって後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けた場合に、症状固定後の収入減を補償する賠償金です。

逸失利益は、基本的には1年あたりの基礎収入に後遺障害等級に対応した労働能力喪失率を掛けたものについて67歳まで請求します(利息分は調整されます)。
しかし、今後昇給が予定されていた場合など、事故で昇給の機会が失われてしまうと、現段階での収入を基礎収入として算定しても妥当な結論とならない場合があります。
たとえば、「交通事故でプロジェクトを外されなければ、出世して昇給していたはずだった」、「後遺障害への負担が少ない部署に異動となり、収入が減った」など、具体的に将来の収入減を想定できる場合には、それを踏まえた逸失利益を請求できます
保険会社は、そこまで詳細を把握して逸失利益の金額を提示しないケースも多いようです。
そのため、逸失利益も弁護士が示談交渉をすることで大きく金額が増額するケースがあり、中には100万円以上も増額になることもあります。
被害者一人ひとりの適切な逸失利益の金額を把握するには、交通事故被害の専門的な知識が求められますので、弁護士に相談してみることをおすすめします。

自分と家族の生活のために適切な賠償金を

休業損害と逸失利益の金額は、収入が多い人ほど保険会社の提示と裁判基準では差が大きくなりやすいです。
ご自身とご家族の生活と将来への影響を少なくするためにも、弁護士に相談をして適切な休業損害と逸失利益を受け取ることを目指していきましょう。
弁護士に依頼をすれば、後遺障害等級の認定や示談交渉の負担を軽減でき、仕事に打ち込める環境に早く戻ることにも繋がります。