信号待ちで停車中などに起こることが多い追突事故。追突事故でむちうちなどのケガをしたら加害者の保険会社から事故被害者に慰謝料が支払われます。この慰謝料請求で損をしないために、慰謝料の計算方法や相場の慰謝料を受け取るポイントを確認しておきましょう。また、追突事故では、加害者の保険会社とのやり取りや事故直後の対応も大切です。
追突事故の被害者が知ってほしい情報をお伝えしていきます。
追突事故で支払われる慰謝料の相場
追突事故でむちうちなどのケガをしたら、加害者の保険会社に対して慰謝料を請求することができます。
支払われる慰謝料の金額は追突事故の被害者が自由に決められるわけでも、保険会社が一方的に決めるわけでもありません。
基準額を参考に計算し、示談交渉で金額を決めていきます。
慰謝料は示談交渉で増額可能!
慰謝料の金額を決めるのは、治療の終了後(後遺症が残った時は後遺障害申請後)です。
保険会社から治療費や休業損害と一緒に金額が提示されますが、この時に保険会社から被害者に提示される慰謝料の金額は相場以下のことがほとんどです。
そのため、すぐに示談をしてしまうと、「本来はもっと慰謝料が支払われたはずなのに、少ない金額で示談してしまった」となってしまいます。
すぐに示談せず、示談交渉をしましょう。
慰謝料が増額される可能性があり、追突事故でむちうちになったケースでは、数十万から100万円以上も慰謝料が増額されるケースも少なくありません。
自分の場合はいくらまで慰謝料を増額できるのか、それは慰謝料の相場を知るとわかります。
追突事故での入通院慰謝料の相場
追突事故の被害者が請求できる慰謝料の相場を見ていきましょう。
追突事故でケガをした被害者は、加害者の保険会社に入通院慰謝料を請求することができます。
入通院慰謝料は治療期間によって金額が変わり、治療期間が長いほど高額になります。
相場金額
通院期間 | むちうち(自覚症状のみ)や軽傷の場合 | その他のケガの場合 |
---|---|---|
1ヶ月 | 15.2万円 | 22.4万円 |
2ヶ月 | 28.8万円 | 41.6万円 |
3ヶ月 | 42.4万円 | 58.4万円 |
4ヶ月 | 53.6万円 | 72万円 |
5ヶ月 | 63.2万円 | 84万円 |
6ヶ月 | 71.2万円 | 92.8万円 |
- 裁判基準の8割の金額を相場としています。
上の表は追突事故によるケガの治療で通院した場合に支払われる入通院慰謝料の相場です(事故直後に入院した場合は金額が異なります)。
むちうち(自覚症状のみ)や軽傷の場合と、その他のケガの場合で金額が異なります。
追突事故では症状がむちうちのみというケースも多いですが、その場合は「むちうち(自覚症状のみ)や軽傷の場合」が金額の相場となります。
保険会社から慰謝料が提示されたら、この表の金額と比べてみてください。
保険会社の提示が表の金額よりも低い場合、その慰謝料は相場以下です。
示談交渉で表の金額程度まで増額できる可能性があります。
また、この表は裁判をした場合に認められる金額(裁判基準)の8割の金額を相場としてご紹介しており、表以上の金額が認められることもあります。
なお、通院期間に端数がある場合(5ヶ月と10日など)は、1日単位まで細かく金額を計算する必要があります。
計算が複雑になりますので、弁護士に相談し、金額の相場を確認することをおすすめします。
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後遺障害慰謝料の計算方法と金額
追突事故によるケガで後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けることで後遺障害慰謝料も請求できるようになります(入通院慰謝料とは別で請求可能です)。
後遺障害慰謝料は後遺障害等級によって金額が変わります。
追突事故の場合はむちうちの後遺症が残ることが多いので、むちうちで認定される後遺障害12級と14級で相場を確認していきましょう。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害等級 | 金額の相場 |
---|---|
第12級 | 230万円〜290万円 |
第14級 | 90万円〜110万円 |
- 裁判基準の8割〜10割の金額を相場としています。
保険会社から提示される後遺障害慰謝料は、ほとんどのケースでこの金額より低額です。
半分以下のことも少なくないでしょう。
表以下の金額が提示されている方は慰謝料増額の見込みがありますので、そのまま示談をしないようにしましょう。
保険会社が増額に応じてくれない、どうやって示談交渉すればいいかわからないという方は弁護士へのご相談をおすすめします。
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追突事故の慰謝料で損をしないために
追突事故の慰謝料請求では、相場や計算方法を知る以外にも大切なことがあります。
慰謝料請求で損をしないために、被害者が覚えておきたい5つのポイントをご紹介していきます。
1. 通院をないがしろにすると損をする
痛みはあるけど、我慢できる程度のケガで済むこともあります。
そのような場合に、仕事や日常生活を優先し、治療を疎かにするのはおすすめできません。
医師の指示通りに治療を続けないと治るケガも治らなくなる可能性があります。
また、入通院慰謝料は、治療回数を加味して金額を計算しますので、通院が少ないと支払われる慰謝料が低くなります。
追突事故から時間が経つと、医師に「まだ通院を続けるように」と言われているのに通院をやめてしまう人もいます。
少し具合が良くなったからと言って、勝手に通院をやめないようにしましょう。
ケガの完治、または症状固定を迎えるまで通院を続けることが大切です。
2.後遺障害等級の認定で金額が大きく変わる!
追突事故によるむちうちなどで後遺症が残り、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料と逸失利益は請求額が高額になることが多く、等級認定を受けなかった場合と受けた場合では、2倍以上の金額差があることも珍しくありません。
この2つの補償は、後遺症が残っても後遺障害等級の認定を受けていないと支払われませんので、後遺障害等級が認定される可能性がある場合は、「早く示談したい」、「手間がかかる」と思っても、必ず後遺障害等級の認定申請を行ってください。
後遺障害等級の認定申請については、下記の記事で詳しくご説明しています。
3. 慰謝料の金額を決める3つの基準を把握する
基準 | 詳細 |
---|---|
自賠責基準 | 自賠責保険から支払われる金額。 |
任意保険基準 | 任意保険会社が独自に設定している金額。 |
裁判基準 (弁護士基準) |
過去の裁判例をもとに算出している金額。 |
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料には、金額を決める3つの基準があります。
自賠責基準は、自賠責保険に慰謝料請求した場合に支払われる金額、任意保険基準は、加害者の任意保険が最初に提示してくる金額、裁判基準は、裁判所が認めた慰謝料の適性額です。
金額は自賠責基準が一番低く、次に任意保険基準で裁判基準が一番高額です。
任意保険基準と裁判基準には大きな金額差があることが多いため、裁判基準の金額を知ると保険会社から提示される慰謝料は金額が低いことがわかります。
3つの基準の詳細や計算方法、金額は下記でご説明しています。
4. 増額交渉をきちんと行う
保険会社は、任意保険基準の慰謝料を事故被害者に提示してきます。
最初から裁判基準の金額を提示してくることはほとんどありません。
そのため示談交渉は、任意保険基準の金額を提示してきた保険会社に対して裁判基準の金額を根拠に反論するような形で進めていきます。
示談交渉の結果、裁判基準の満額が認められることもありますが、被害者側も譲歩し、裁判基準の8割〜9割で示談することが多くなっています(この金額が先ほど紹介した相場です)。
慰謝料を増額する方法については、下記の記事をご確認ください。
5. 保険会社に疑心を抱いたら弁護士に相談
最後は、加害者の保険会社との関係性についてです。
追突事故では、被害者に過失がなく、被害者自身で相手保険会社とやりとりをするケースが多くあります。
その際に、保険会社が言うことが正しい、任せておけば安心、というわけではありませんので気をつけましょう。
保険会社の主張は加害者目線
追突事故が起きた状況や慰謝料の金額などは被害者目線ではなく加害者目線で主張してきます。
そのため、「自分が思っている事実と違う」、「辛さを訴えているのにわかってくれない」と思うことも多いでしょう。
しかし、やりとりをしているのは加害者が加入する保険会社で被害者の味方ではないため、保険会社からしてみると加害者目線の対応が当たり前となります。
担当者の性格や仕事のやり方によって対応が異なり、丁寧な担当者も多いですが、被害者に対して心無い発言をしたり、強気の態度で接してきたりする担当者もいます。
自分ですべてやろうとしない
追突事故で過失がない場合、被害者が加入する対人賠償責任保険を使えないため、被害者の保険会社が相手保険会社と被害者の間に入ってくれません。
弁護士に依頼しなければ、ご自身で示談交渉などを行う必要があります。
しかし、ご自身で示談交渉をすると、知識や経験で上回る保険会社にうまく言いくるめられ、相場以下で示談をしてしまう可能性があります。
対応が重荷だったり、示談交渉がうまく行かなかったりした場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。
弁護士が介入することで、対応の負担が減り、相場の慰謝料獲得にも繋がります。
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追突事故直後の対応と注意したいこと
ここでは、追突事故にあった際の初動対応として警察への連絡と、病院に行くことについてご説明します。
追突事故では、警察に連絡しない、病院に行かない、といったケースも見受けられますが、それはトラブルの原因になります。
どのようなトラブルが起こるかも合わせてご紹介していきます。
警察に追突事故の連絡をする?しない?
追突事故の相手が責任を認めていて、ケガも軽傷だと、「後ろから追突してきたドライバーと連絡先だけ交換し、あとで慰謝料や修理費を払ってもらえば、警察に連絡しなくてもいい」と思うかもしれません。
しかし、ケガの程度や自動車のキズに関係なく、交通事故に遭ったら警察に連絡をしましょう。
相手が「警察に連絡しないほしい」と言ってきても、応じてはいけません。
加害者と連絡が取れなくなる可能性もある
当事者同士の連絡先だけ交換して、警察に連絡をしなかった場合、もし、相手と連絡が取れなくなったらどうしますか?
「事故の相手方と連絡が取れなくなって困っている」という話は少なくありません。
警察に連絡しておらず、加害者と連絡がつかないとどうすることもできません。
後から警察に連絡しても、追突事故の記録が残っていないので何も解決できず、「慰謝料は受け取れない」、「治療費や修理費はすべて自己負担」となってしまうおそれがあります。
追突事故の後は病院に行ったほうがいい?
警察への連絡と同じように迷う人が多いのが、病院に行くことです。
一見するとケガをしてなさそうな場合などは、「病院は行かなくて大丈夫」と判断してしまうかもしれません。
しかし、追突事故の被害にあったら、必ず早めに整形外科で診察を受けましょう。
追突事故で受傷することが多いむちうちは、見た目ではわからないケガです。
外傷がなくても、追突した際に首に強い衝撃が加わってむちうちになっている可能性があります。
むちうちは事故直後に痛みを感じず、少し時間が経ってから症状が出ることもあるため、事故直後に病院へ行き、体に異常はないか医師に診てもらいましょう。
事故直後に診察を受けていないと、慰謝料請求できないことも
すぐ病院に行くことが大切な理由のひとつに、事故とケガの因果関係をはっきりさせることがあります。
むちうちは、事故後、数日や1週間程度が経ってから痛くなることもあります。
しかし、時間が経ってから病院に行っても、交通事故が原因でむちうちになったと証明することが難しくなります。
すると、相手の保険会社は「事故とは無関係のケガに対しては慰謝料を支払うことができない」と、慰謝料の支払い自体を拒否してくることがあります。
そのように主張されないためにも、事故直後に診察を受けておくことが大切です。
追突された後にやるべきこと
追突事故に遭った際に、被害者がやることをご案内します。
- 車を安全な場所に止める
- ケガがなくても必ず警察に連絡する
- 加害者の連絡先などを確認する
- 自分が加入する保険会社に連絡する
- 車の修理会社に連絡する
- ケガがなくても必ず病院に行く
急ぎの用事があると「早く行きたい」と思うかもしれません。
しかし、警察への連絡をはじめ、事故の初動対応を怠ることは追突された被害者にとってリスクのある対応です。
車を運転中に追突されてしまったら、交通事故の程度に関わらず、適切な対応をとることを忘れずにお願いします。
追突事故被害の相談は弁護士に
追突事故で自分の自動車保険が使えない場合、事故被害者の負担は増えてしまいます。
すべて自分で対応することは大きな負担ですし、わからないことがあった場合にわからないまま進めてしまうと、後悔することになってしまうかもしれません。
追突事故被害に遭われた方は、一度弁護士に相談することをご検討ください。